Long December Days:20

「文成、話を聞いていて考えたことがあるんだ。聞いてくれるか?」

「いいだろう、言ってくれ」

「まず最初に、お前に魔法を教えてくれた奴は頭の中で銃を撃てと言ったんだよな。それに対してお前は、銃の中身よりも遥かに再現の簡単な弓矢を用いることで、『何かをうちだす』という銃と弓矢に共通する結果を引き出した。この『何かをうちだす』というところがミソなんだ。魔法は物理法則なんか無視しちまうもんなんだろ?じゃあ、『うちだす』んじゃなくて、『生み出す』にしたらどうなんだ?」

身振りを交えて説明するぷでぃんぐを、文成が止める。

「待て、ぷでぃんぐ。ジェスチャーを使うなら疑似空間内でやればいいことじゃないか?」

「確かにその方が分かりやすいな、ちょっと待て準備をする」


「……相変わらず訓練用の疑似空間は何もないとこだな」

「床ならあるじゃないか。それに、空もきちんと青い。真っ暗で床も定かじゃない場所に比べれば少しの変化があるだけでも十分さ。それとも一般的な疑似空間であるところの海岸が好きなのか?」

リノリウム製のような質感の白っぽい床と青空が地平線の遥か向こうにまで広がるだけで、何かに干渉されない限り、障害物がどこにもない場所だから、ぷでぃんぐの言うことはもっともである。

「嫌いじゃないが、これに比べちまうとどうしても容量を食うからな。軽い方が取り回しが楽でいい。さて、話を元に戻すとだ」

ぷでぃんぐが指を鳴らすと、ぷでぃんぐの10m先に的が現れる。ソフィアの用いる、射撃用の的ではなく、全身が作られているマネキンだ。

「こいつに対して」

ぷでぃんぐは次に虚空から銃を生み出し、すぐさま的に向けて発砲する。的の頭に弾丸は命中し、貫通する。

「こうしろってのが教えられた魔法だろ?そうではなくだな……」

再び指を鳴らして、一つ目のすぐ隣に二つ目の的を生み出すと、見えない刀を持って袈裟切りに振る。

「たとえばこんな感じで刀を離れた場所に生み出してみるのはどうだ?」

マネキンにめり込むように刀が現れ、マネキンの胴体を大きく抉る。

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