Long December Days:19
†12月17日夜 ヨルムンガンド内
「……それで、ここに来たわけか」
文成から事情を全て聞いてあきれ顔のぷでぃんぐが文成に言う。
「そうだ。ここでなら思う存分電力も気にせず訓練ができるだろう。こんな風に電源を繋いでしまえば」
朝と同じように、文成はメンテナンスユニットの内部に入っているが、大きな違いがある。胴体とメンテナンスユニットがいくつものケーブルで繋がっているのだ。ぷでぃんぐが文成に協力して接続しながら、詳しい事情を聴き終わって、今に至る。
「確かにウチ以上の電力供給源なんか後は発電所くらいしかないだろうがね。なるほど、かなりの電力が欲しいと言うから何かと思ったらそういうことか。文成。実験は中止だ。どうしてもヨルムンガンドの電力をお前の義体に供給したいならヨルムンガンドを買い取ってくれ」
「なぜ断る。念願の魔法についての実験が思う存分できるんだぞ」
不満げにそう言う文成に対して、ぷでぃんぐは露骨に大きなため息をつく。
「あのな、文成。お前の義体にはびっくりするくらいの金がかかっている。だから通常の運用を遥かに上回る電力を供給されたところで、電脳にも義体にも影響なんか出ないだろう。ケーブルを繋いでやったのはそのせいだ。だがな、いくらなんでもバッテリーが数分で枯れるような電力以上のものを何十分も供給したら、ヨルムンガンドの変電設備が持たない。こいつはボロい上にどうしようもないほど繊細だ。もしかしたら二度と動かなくなるかもしれない」
「まぁそれはそれとしてだ。突然思いついたことがある」と、ぷでぃんぐが一息置いて、わざとそっぽを向く。
「どっかの誰かさんのことだ。魔法なんて面白いオモチャを手に入れてテンションが上がれば、無茶をし出す。自分に音楽の才能があるからなんて言い出して、世界中のトップクラスの技術者連中かき集めてネットアイドルやり出すようなアホなんだからな。そのアホとの付き合いは中々長いもんだからある程度思考回路なんか読むのは容易い。――オモチャを手に入れたらどうするか。力いっぱい使い潰すんだ。自分の命を削るってことが分かっててもな」
「何が言いたい」
文成が眉をひそめて、独り言を言い出した笑顔のぷでぃんぐに文句を言う。ぷでぃんぐが満面の笑みを浮かべたまま、文成の方を向き直す。
「魔法を使う時に力が入り過ぎてるんじゃないか?イメージの方に電力を使い過ぎて、魔法のエネルギーが余っていると言ってもいい。槍術を使うときのことを思い出せ。お前は最低限の力で戦おうとするじゃないか」
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