Long December Days:21

†12月17日夜 アスクレピオス内

文成が、ぷでぃんぐに協力してもらいながら魔法の訓練をしている丁度その頃、「あなたの助けが欲しい。二人だけで会いたい」と、陽奈はソフィアに呼び出されていた。

「ごめんね、こんな時間に。急な用事で、私は今ここからどうしても離れるわけにはいかなくて」

謝るソフィアに対して、首を激しく横に振る陽奈。

「全然大丈夫ですよ、ソフィアさん。私にできることならなんでもします」

「なんでも」のところに特に力を入れて言う陽奈。ソフィアに協力できることが嬉しくてたまらない様子だ。

「単刀直入に言うけど、あなた、嘘をつくのは得意?」

「……嘘をつく相手によります」

「そうよね……。じゃあ、電脳をちょっとの間貸してくれない?危ない目には遭わせないから」

「私の体を乗っ取らせてくれってことですか?」

陽奈は少し嫌そうな顔をして、ソフィアに言う。申し訳なさそうな声でソフィアは説得を続ける。

「迷惑なのは分かってるんだけど、他に頼める相手もいないのよ」

「何をするんですか?」

「ネットを使った商談。義体のパーツの調達をしたいんだけど、私が現れたとなったら向こうは引っ込むのよ。幸いあなたは若いでしょ。若い女の子の義体を使う物好きな武器商人って結構珍しくなくてね。違法改造を施したパーツだから当然のことなんだけれど」

ソフィアは、ソフィー・システムを使っているせいで、違法な電子ドラッグや、改造パーツの取り締まりにも協力している。だが、「技術に貴賤なし」を盾に、自分の思い通りに改造パーツを取り扱っているという側面もあるのだ。

陽奈は「分かりました。喜んでお貸しします」という返事の、「分かりま」のところまで発音して、とあることに気がついたので止めた。

「それって、ソフィアさんがいっぱい持ってる色んな義体を使っちゃったらまずいんですか?私の体を乗っ取るよりも遥かに効率的だと思うんですけど」

「それがね、丁度今義体という義体を全部使っちゃってて、ここに呼び戻すだけでも結構時間がかかるの。もうすぐ始まる商談には間に合わない」

「ネット回線をハッキングすればどうにかなりませんか?」

「向こうは用心深いからそんなことをすれば絶対に出てこないわ」

「……分かりました。私の体をお貸しします。でもその代わり、私の意識もちょっと残しておいてもらっていいですか?」

「もちろんそうするわ。ありがとう、陽奈。とても感謝している」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る