Long December Days:13

「ふーみんはさ、ふーみんになってから、ソフィーを全然信用してないよね」

「……その通りだ」

嘘をつくなと言われた通り、正直に文成は答える。

「でもね、二人とももっと正直に自分の気持ちを話せば、今よりずっと仲良くなれると思うの。ふーみんの怒りも、ソフィーの隠し事も、『今よりもっと良くしたい』って意味なら一緒だもん」

「残念だが、それはムリだ」

「なんで?」

金髪の少女は口をとがらせて、強い口調で文成に言う。

「大人になってしまったから……じゃ納得してくれないな。要のところは僕もソフィーも意地っ張りなんだ。不必要に互いに対して甘いと言い換えても良い。正直に心と心のぶつけあいをしなくても互いの仲が回っているからそれでいいと考えてるんだ」

文成のその言葉に、余計に少女の口がとがる。

「二人とも子供っぽくて面倒くさがりってこと?」

「それは違う。心のぶつけあいをすると、時間がかかりすぎてしまうんだ。何か隠し事があるとすると、きっと隠し事をするに足るような理由もセットにくっついてくる。だから、もしも隠し事の理由の方がなくなってしまえば、きっと隠し事をすることもなくなるだろう。でも、実際のところ隠し事の理由がなくなる――もっといえば、隠し事をしている本人が『理由がなくなった』と感じる――ことはまずありえない。だから僕が智絵だった頃、人間たちの隠し事を暴くことを仕事にしていた。そうすれば、心と心のぶつけ合いをすることができると考えていたからね。その僕が今は、ソフィーの隠し事を暴くことも、僕の隠し事を暴くこともしていない。なぜなら、ソフィーの過ごしたこの30年の重みは、僕にとっても重いものだからだ。智絵が死んだ事故のことを、僕やソフィーがどう感じているかは、君には手に取るように容易く知ることができるだろう?」

それを聞いて、少女は口をとがらせるのをやめる。

「……私には分からない苦しみだと思う。私たち『本物の魔法使い』はとても長い時間を生きることができるから、我慢しないでぶつけちゃう。とても面白そうな気持ちだから、ちょっと羨ましい」

「動物でも飼えば分かってもらえるかもしれないよ」

「そっか。……そうかも。……ありがとう、ふーみん」

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