Long December Days:11

ソフィアは鳴り響く警報の音で目を覚ました。文成の信号がソフィー・システムで捉えられなくなったということを表す警報だ。文成を守れるようにと、以前作ったものだった。ここ数か月ほどかなりの頻度で鳴っており、今更あまり気にすることでもないと思っているのだが、今回は別だ。なぜなら、文成は間違いなくアスクレピオスの中から一歩も動かないはずだからだ。となると、文成の信号が途絶えたということは敵に襲撃された可能性が非常に高いことを意味している。

「文成、どこ!?」

電脳通信で呼びかけるが返事はない。時刻は深夜。文成は本を読んでいるか寝ているかどちらかのはずだ。文成の部屋にある監視カメラの映像を探る。文成の影はない。信号が途絶えるその瞬間までずっと監視カメラに背を向けて座ったままでぴくりとも動いていない。急いで自分の義体を文成の部屋に走らせながら、ソフィア本人はデータ上で文成の行方を探す。

「どういうこと……!」

廊下の監視カメラを確認しても、半ば自暴自棄になってアスクレピオスの全てのカメラを確認しても、どこにも文成も侵入者もいない。

「そんなことはあり得ない。ここにあるカメラは全て最新型のもの。ハッキングすることなどどんな手段をつかっても不可能なはず!」

何度も何度も監視カメラの映像を確認して、ようやく奇妙なノイズの存在に気がついた。コンマ数秒のごく小さなノイズであるが間違いない、ハッキングされている。誰かが深夜の見回りに合わせて侵入し、歩きながらゆっくりと一つずつ監視カメラを順番にハッキングして、文成の部屋に向かっていったことを、ソフィアは掴んだ。

「必ず犯人を見つけてみせる……!」

犯人は外部から侵入している。アスクレピオスの敷地内の全ての監視カメラと、アスクレピオス付近の監視カメラの映像も、同様のハッキングの痕跡がないかを探りながら、ソフィアは義体が文成の部屋に着くのを今か今かと待った。

――しかし、ソフィアの義体が文成の部屋に着いて、中を見ても、文成はいなかった。まるで部屋には最初から誰もいなかったかのように、机にも椅子にも、文成がいた痕跡がない。

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