Long December Days:5

「はぁっ!」

飛びあがりながら目を突いたところ、なんとか届いた。さらによいことに、目になら刃が通った。鬼が苦しみだしたので、少しだけ距離を取り、もう片方の眼も潰す。これで視界を奪うことができた。

「こんな化け物がほんとに目を潰されて周りが見えなくなるとは思えないけどね!有効打にはなった!」

鬼が闇雲に暴れだすので距離を開ける。どうやら本当に周りが見えないらしい。隙が生まれたので、陽奈は文成に通信を送る。

「ブンセー!ブンセー!いる!?」

『ハル?君はいまどこにいるんだ?ウチにいないじゃないか……』

「話はあと!槍を持って今すぐ墓地に来て!変な怪物に襲われてるの!月影の刃が通らないしすごくデカいしわけわかんない!」

『――わかった。すぐに向かう。敵わないと思ったらすぐにそこから逃げるんだ。いいね?』

「早く来てね」

『10分待ってくれ』

通信が切れる。鬼が陽奈の居場所に気がついたらしい。まっすぐ陽奈の方に向かってくる。

「ふぅ……あと10分か。お墓壊したら、まずいよね」


10分後、鬼を挟んで、陽奈と向かい合う格好で息を切らした文成が現れた。いつもの槍を持っている。

「ハル!待たせた!」

「遅い、ブンセー!」

「そいつがその怪物だな?」

「そう!切っても突いても全然効かなくて、目だけは潰したけどピンピンしてる」

陽奈のその台詞を聞きながら、文成も鬼に向かって突きをくりだす。しかしやはり同様に、槍の穂先は弾かれてしまった。

「……なるほど、確かに刃物は通用しそうにないが」

素早く槍を180度回転させて、再度石突で突きを放つ。そうすると、鬼の腕が薄い金属板を叩いたかのように大きくひしゃげた。鬼の悲鳴が空気をつんざく。

「面白い魔物だ。刃物は通用しないのに鈍器にはこれほど弱い」

そのまま文成は鬼のもう片方の腕と両脚に向かって連続して四度突きを繰り出した。あらぬ方向に両手両足が曲がった鬼はそのまま消え、そこには壊れたMPFだけが残される。

「鬼退治完了だ」

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