Long December Days:6
「ところで、ブンセー。私いやな予感がするんだけど」
「ハルもそうか」
「ブンセーもなの?」
「ハル。一体なんで墓地になんているんだ?」
「ブンセーが留守の間に依頼が来たの。墓地の清掃用の機械が暴走しちゃって危ないから止めてくれって」
「ハル、依頼人の名前は聞いたか?」
「ううん、聞いてない。私でもすぐこなせるような単純な依頼だと思ったし。ヨーロッパ系の若い男の人。金髪ロン毛で、ニコニコ顔が顔に貼り着いちゃって取れなくなっちゃったみたいな感じの」
文成の顔が急に険しくなる。
「ハル。依頼人の名前はきちんと聞かなきゃダメだ」
「でも、残雪派の人がお小遣い稼ぎに仕事を回してくれたのかなって思ったんだもん。清掃用の機械を止めたらAIをソフィアさんに渡せばいいからって言うし」
しどろもどろに言い訳を続ける陽奈を文成はピシャリと制する。
「そういう風に油断した時こそ聞かなきゃダメだ。ソフィーを恨んでいる人間が残雪派の名前を騙って依頼していたとしたらどうするんだ。彼らはソフィーに気づかれないように動けるんだぞ。君に危険が及ぶことだってあるのにどうしてそう君は迂闊なことばっかりするんだ」
「ごめん、ブンセー。反省してる」
「そうだ、大いに反省してくれ。僕と一緒にいようと言うのなら、自分の身は自分で守れるようにするんだ」
縮こまる陽奈に向かって、文成は溜息をつく。
「とにかく今回は無事で良かった。それで、ハル。依頼人はAIを持ってソフィーのところに行けと言ったんだな?」
「うん。罠が仕掛けられてるのかな?」
文成はじっとMPFの残骸を見つめる。未来を視ているのだ。
「分からない。差し迫った危機はないようだが……」
MPFの残骸に近づく文成の後ろに、黒いもやのようなものが現れる。その靄は段々大きな刀を持った腕のような形になり、文成に向かってまさに刀を振り下ろさんという動きを見せた。
「ブンセー!後ろ!!」
陽奈の叫びによってすんでのところで文成も気がつき、槍で防ぐ。そして、そのまま靄は先ほどの鬼の形になった。先ほどの素手の状態とは違い、今度は大きな刀を持っている。
「こんな未来、僕は視ていないぞ……?」
槍を構えながら、文成は呆然としている。
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