Long December Days:4

墓地に着いた陽奈を出迎えたのは大きな足音と、その地響きを発する2mを優に超える体躯の大きな鬼であった。大きな赤い目が陽奈をまっすぐに見据えている。まるで岩で成形されたような筋肉が包み込む形で、うっすらと清掃用のMPFのボディが見える。MPFの原型は、とどめていない。

「……はい?」

驚き言葉を失う陽奈の目の前まで鬼がやって来て、陽奈に向けて拳を繰り出す。

「あっぶな!」

その一撃を間一髪のところで陽奈はかわし、月影を抜刀して上段に構える。

「話がちがぁう!!」

精一杯の叫びをあげて、陽奈は鬼から距離を取る。そう、話が違う。少なくともこのような鬼の姿になっているなどという話は聞いていない。空気を震わすような拳を持っているということももちろん初耳だ。

「待って。待って?これ、刃は通るの?」

気持ちを落ち着けるために軽く深呼吸をして、陽奈は上段の構えのまま一息に距離を詰める。文成の突きと同じ手法だ。そしてそのまま、鬼の右腕に向かって真っすぐ振り下ろす。しかし、鬼の腕は切れなかった。鋼でできているかのように月影をはじいたのである。鬼は左腕を陽奈に向けてふり回しすが、それを陽奈は難なくかわして、再び距離を取る。今度は中段の構えになおす。

「切ってダメなら――」

一足で距離を詰めながら、今度は突きを放つ。先ほどよりも速い速度だ。ところが先ほどと同様に、鬼の皮膚は月影をはじきとばしてしまう。

「突いても傷ひとつつかない、と」

鬼がじたばたと両腕をふり回すが、陽奈にかすりもしない。ひらりひらりと陽奈は避けてしまう。確かに力強さこそあるものの、文成とは比べ物にならないほどゆっくりとした動きなので、普段から文成を練習相手にしている陽奈の敵ではないのだ。驚いている状態で不意打ちを食らうことはあれど、落ち着いてしまえば負ける方が難しい。

「うーん、改造されたMPFって線は……ない、よね。そうだったらきっともっと強くて私じゃ歯が立たないだろうし。妖怪、なのかなぁ」

冷静さを取り戻した陽奈は、敵の分析を試みる。

「だめ。考えても分かんない。一回退いて何か爆弾とか鉄砲とか文成に頼んで持ってきてもらいたいところだけど、こんなの放って逃げたら危ないし……あ、そうだ。目を突いてみたらどうだろ。届くかな……?」

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