Long December Days:3

「はぁ……ほんとに今月頭に一体何があったんだろ、ブンセー。前にも古本を買ってくることはあったけどこんなすごい量買ってきたことなんて今まで一度もないし……」

陽奈の目から見て、今の文成は明らかに怪しい。

「うーん何か重大な見落としがある気がするんだけど……」

陽奈が何かをつかもうとした丁度その時、事務所のベルが鳴った。

「ブンセー?ってことは、流石にないか。古本街の近くで車借りてきたんだろうし。はいはい今出ますよちょっと待ってくださいねーっと」


ベルを押したのは、文成に依頼があって来た人物であった。依頼の内容をかいつまむと、以下のようになる。

先週、ここから歩いて20分ほどの墓地の掃除を担当しているNEが突如として暴走。そのNEは自我を持たない、自律型MPFに毛の生えた程度のものであるという。そのNEの暴走の結果、NEは墓参りにやって来た者や、通りすがりの者を襲うようになった。それだけでなく、 NEは半径10km圏内を徘徊しては、出会った人間に危害を加えているらしい。幸運にも軽症者ばかりで済んでいるのだが、件のNEは2mを超える体躯を持っており、重傷者が出る可能性もある。暴走を止めようと何人かNEに搭載されている盗難防止用の信号を頼りに探しているのだが、足取りはつかめてもNE本体は霞のように消え失せてしまう。一般的な清掃用のNEに搭載されているバッテリーは二日も持たないものであるにも関わらず一週間動作し続けていることから、どうやら何者かが裏で手を引いているらしい。

「白雪文成さんへのお願いは、この暴走NEの破壊ですが、NEに搭載されているAIから、裏で手を引いている何者かの存在を探りたいので、AIだけは壊さないでください」

信号を探っているだけでは霞のように消えてしまうNEであったとしても、この一週間のほとんどで墓地から信号が検出されるため、その墓地に行ってみれば出会う可能性は高い。そこらのNEなど自分の敵ではないだろう。そう陽奈は考え、依頼人を見送ってすぐに、墓地にでかけることにした。文成は、まだ帰宅していなかった。

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