ウケモチシステム:23

文成が自分の右腕を再びつけなおし、一通り問題なく動くか試し終わった時のことである。突然、文成の眼に未来が視えた。駐車場からやってきた三人のNEたちにアスクレピオスの患者たちが傷つけられる未来だ。文成はそれを、数分後に起こる未来だと確信をした。

「ソフィー!敵襲だ!そちらで捉えられるか?」

『敵襲?……ううん、こちらでは何も捉えられない。まさか、さっきみたいにニコラスの使いが来てるの?』

「ソフィーの眼に映らないとなるとその可能性が高い」

まずい、時間がない。その焦りが、文成に青銅の鍵を強く握り締めさせた。鍵の鈍い冷たさが、文成の手に伝わってくる。

「考えていても仕方がない。駐車場に向かわなければ」

そう呟いて、槍を片手に持って、文成は駐車場に走る。もう片方の手では青銅の鍵を握り締めたまま。


文成が駐車場に着いたとき、丁度三人のNEも駐車場に着いていた。三人ともが、電波妨害用の装備に身を包んでいる。そして、三人とも銃を持っている。

「厳しい戦いだな。せめて誰かもう一人いれば話が変わるんだが」

そう言いながら、文成が両手で槍を握るために青銅の鍵から手を離したそのとき、文成の頭に声が響いた。

「僕でよければ、助けになるよ」

「誰!?」

文成の投げかけた問に答えながら、青銅の鍵が一人の男性の姿に変わる。文成よりも少し背が低い、痩せ気味の細い手足。中性的な顔立ちに、烏の濡れ羽色の長い髪。切れ長の吊り目に、陶器のような白い肌。そのような男が紺色の和服に身を包み、日本刀を携えている。

「サク……!?」

文成は、記憶の彼方に失われた、智絵だった時の恋人の名を口にしていた。30年という年月のせいで風化したはずの記憶が、色鮮やかによみがえったかのようであった。確かにサク――咲岡真也が、30年前の姿のままで、そこに確かに立っていた。

「僕の姿に疑問はあるだろう。言いたいこともとても多くあるはずだ。でも今はその時じゃない。僕が手伝う。敵はNEだと言っても大した腕ではないだろう。手早く片付けよう」

「うん。行くよ、サク」

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