ウケモチシステム:22
再びアスクレピオスに戻った文成の手には青銅の鍵が握られている。改めてセンサーで確認してみると、やはり青銅でできているらしいことを文成は認めた。手に持って暫く色んな面から青銅の鍵を眺める文成に、ソフィアが声をかける。
『どうしたの、文成。自分の手なんかじろじろ見て。何か様子がおかしいならそこにメンテナンスユニットがあるんだし確かめたら?』
「……見えていないのか?」
『何が?こっちからモニタリングできる分には何も起きてないけど、どうかしたの?』
「いや、どうもしてない、大丈夫だ。魔法を使ってみたが、何も起こらなかったな。右手を元に戻して僕もそっちに向かうよ」
そう言って、文成は自分のポケットに青銅の鍵を入れた。
『足の方は試さなくていい?もしかしたら全身全部入れ替えたら何か変わるかも』
「興味がないわけではないが、四肢全部を入れ替えるのは時間がかかり過ぎる。それに、足まで入れ替えるとなると足回りのソフト周りの更新も必要じゃないか。そこまでして何もないリスクが怖い。どうせ義体はアスクレピオスの中にあるんだ。泥棒が入るなんてこともないだろう」
『そりゃ確かにその通りだと思うけど……。ほんとにそれでいいの?別に私たちだけでもリリーの面倒もウケモチシステムの面倒もどうにかなると思うわよ』
「それでいい」
『……分かったわ。文成がそう言うなら大丈夫なんでしょ。通信切るわね。いい加減運転の方に集中しないと』
ソフィアからの通信が切れる。一応未来視で確認をしてみるが、ソフィアの気配はもうない。既に一度済んだことを繰り返すだけなので文成だけでもメンテナンスユニットを扱いきれると判断したのだろう。
「ソフィアの眼には映らない鍵、か。確かにそれだけでもこの世界では異質な存在だ」
メンテナンスユニットで右腕を外しながら、ポケットから再び青銅の鍵を出す。同じ機械の眼でも文成の眼には映っている鍵である。重さも確かに感じる。電脳に干渉して重さや形を知覚させているだけではない。
「もしもこれが僕の眼にしか映らないものであるならまずは電脳のオーバーホールの必要があるな……」
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