ウケモチシステム:24

NEが三人同時に発砲してくる。それを文成もサクも難なくかわす。NEたちは三人とも固まって立っていたのが運の尽きである。

文成とサクの二人は一気に距離を詰め、それぞれ一人ずつを一撃で倒す。そして、驚き戸惑う最後の一人を、

「遅い!」

「弱い!」

二人で同時に攻撃して倒す。

「サク、助けてくれてありがとう。サクがいるだなんてNEたちは予想もしていないことだったみたいだ。それで動きが止まっていたおかげで手早く片付けることができた。でも、本当に、君はサクか?変身しただけの、青銅の鍵ではないのか?」

サクが深いため息をつく。

「相変わらず鋭いな。そう、僕は咲岡真也ではない。言うなれば、君の夢だ」

「夢?」

「青銅の鍵の力はとても単純なもので、持ち主――今回の場合は君だ――の見る夢を現実のものにしてしまうものに過ぎない。だが、青銅の鍵は単純ゆえに強力でもある。確かにある程度夢の質によって叶えるものが変化することはあるけれど、現実にとても強い影響を与える。今回の場合は、咲岡真也の体がもう存在しないにも関わらず、蘇る結果となった。君が咲岡真也を必要とする間でだけ」

そう言うと、サクの体が霞でできているかのように急に透明になり始めた。

「サク。駄目だ。雪河智絵わたしはサクがいない世界では生きていけない」

「君は白雪文成として生まれ変わってしまったんだろう?白雪文成に必要なのは咲岡真也ではない。探究心だ」

首を横に振り通す文成に、サクが優しく語りかける。

「咲岡真也は西暦時代の歴史や民話を好んだ。その時に、君は保食神ウケモチノカミの話を咲岡真也から聞いた。よく覚えているはずだ。死んでしまった保食神のその体から食物が生まれたと。白雪文成。君は、咲岡真也の死によって生まれた悲しみを糧に生まれたのだと考えることはできないだろうか。保食神の口から生まれた、一種醜いとも思えるそれを食べる行いは、人の様々な行為が生み出す感情が未来を作ることと同一と考えることはできないだろうか。君は食物を必要としないとつい先日言っていた。それは、君が既に『ウケモチシステム』を持っているからなのではないか」

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