ウケモチシステム:9

†12月1日深夜24時 アスクレピオス

「二人とも、起きてる?」

ソフィアからの質問に、二人とも答える。

「はい」

「起きてるよ」

「アスクレピオスに侵入者。二人、かなりいい装備を持ってるわね……正規の軍人じゃなくて傭兵じゃないかしら」

身構える二人を、ソフィアが制する。どうやら敵の電脳をソフィー・システムを使って覗き見ているようだ。

「ちょっと待って。侵入者は電脳をハックされたときの対処を全くしてない。油断しているのか、私がいると知らないのか。どっちにしろ私の勝ちね。ちょっと待っててちょうだい。すぐ片付ける」

「待て、ソフィー。今未来を視た。君が、負ける」

「いくら電脳を搭載してるからって人間に私が負けるわけ」

「ないでしょう」まで言い終わらない内に、ソフィアは自分の義体からケーブルを出して、文成と有線接続をした。有線接続ならソフィー・システムを通してもハッキングされない。

『分かった。そういうことね』

『その通りだ、ソフィー。敵は人造人間NEだ。それも、未だに僕ら人間を支配しようと考えている、僕らが偽神ぎしん戦争で戦った、その相手のNEだ。前の手は、まだ相手に通用する?』

『あなたが蘇ったことは知られてないはず。使えるわ』

『分かった、やろう。五分で片付けてくれ』

『三分あれば十分よ』


侵入者はまだ入り口の近くである。

その時、侵入者は自分たちの電脳がハッキングされたのを感じた。知らなければ見逃すほどの、ごくわずかなノイズである。それを感知した侵入者たちは、すかさずその信号を逆探知して、偽情報と共にハッキングし返す。侵入者たち自身の視覚もふさがれることになるが、センサーとマップ情報さえあれば問題ない。

侵入者たちの視界が二重にぶれる。二重ハッキングのせいだ。侵入者たちは成功したと思った。


「かかった。侵入者たちに文成の視界を見せてる。数分後に発生する未来ね。侵入者のセンサーは完全に掌握した。歩いているつもりだろうけど全く動いてないわ。ハルナ、捕まえてきて。私たちは足止めしておく」

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