ウケモチシステム:10
「ソフィー。
「ウケモチシステムは人間から食事の必要を失くすものってことでしょうね」
「ソフィー。ウケモチシステムは本当に実現可能な技術だと思うか?」
「分からない。現在の科学技術では不可能。生体義体のメンテナンスユニットを含めてここまで小さくできれば可能だけれど、そんな技術は魔法でしかありえない」
生体義体には人間と同じ質感を維持するために「思考する遺伝子」が使われている。思考する遺伝子を切断された腕の切断面に施せば、腕が元通りに戻る便利なものである反面、暴走し、人体にとって有害なものを造り出す危険性を秘めている。有害なものを造り出さずとも、肩から足を生やす程度のことはしてしまうのだ。生体義体のメンテナンスユニットはそれを防ぐためのものである。しかし、生体義体のメンテナンスユニットはどれだけ小さく作ろうともおおよそ六畳間程度のスペースを必要とするものなのだ。間違っても人体に収納できるようにはならない。
「でも、魔法使いはソフィー・システムに頼らない人間が多すぎる。私が得られる情報はどんなに頑張ってもソフィー・システムの範囲内に限られてしまう。ただし」
そこまで言って、ソフィアは一度深呼吸をする。自分の考えを整理しているのだ。
「義体技師の視点から言わせてもらえば、不可能ではないと思う。思考する遺伝子を確実に制御できるようになれば完全にメンテナンスフリーの義体の一部として、ウケモチシステムを用いることができるようになるはず」
「メンテナンスフリーの義体の一部か……。誰かに渡すわけにはいかないな」
残雪派には全身義体の人間も多くいる。全身義体でなくとも、内臓が義体の人間も珍しくない。人間であれば、食事の必要がある分自分の肉体を分解しなければならない苦痛から解放される。自分の体にウケモチシステムを用いようとする人間はかなりの数になるだろう。混乱の元になりかねない。同じ理由で、誰か個人や企業に渡すのも論外だ。
「でも、このままじゃ事態を嗅ぎ付けた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます