ウケモチシステム:7

陽奈が倒れた金髪の少女をアスクレピオスまで運んだ。依然として意識不明のままなので、原因調査のために拘束衣を脱がしたところ、全身が生体義体――有機物で作られており、生身の肉体の感触を再現できる代わりに高価で性能も低くメンテナンスも頻繁に行わないといけない義体――でできていることが判明した。そのため、生体義体メンテナンス用のポッド内に移送し、アスクレピオス内で一番義体に詳しい医者――ソフィアのことである――に連絡。ソフィアが調べたところ義体電池の不調であることが分かり、電池交換をするべく開腹。しかし、電池も電池の代替になるような既存の技術も一切なく、あるのは「ウケモチシステム」と印字された未知の直方体の物体が一つだけ。微かに動作音が聞こえ、食物を生産しては、隣接する義体用の消化ユニットに運んでいることを確認。消化ユニットの消化量を超えて食物を生産しているので体内から食物を垂れ流す形にしてひとまず対処。現在のソフィアは意識回復を待ちつつ「ウケモチシステム」がいかなるものであるか調査中。

その間何もできることがなく手持ち無沙汰の陽奈に対して、ウケモチシステムの情報を文成が持っているかもしれないと、ソフィアが提案。以上がことの顛末である。

文成は悩んでいた。有益な情報は全く持っていないのだから、何も知らないと答えるのが自然である。だが、ソフィアに嘘をつくのが忍びなかった。一番の友人であることは事実である。できれば隠し事はあまりしたくない。

「いや、何も知らない。ソフィアに役に立てず済まないと謝っておいてくれ」

「ふうん、ありがと。あ、私付き添いで目を覚ますまでここにいるつもりだから」

「ソフィーから帰るように言われるんじゃないか?」

「だってあの子軍人さんに追われてたんだよ?間違いなく事件じゃん。探偵の出番じゃん。それに、もしも病院にまで追っ手が来たら誰があの子を守るの。ソフィアさんの義体は戦闘用じゃないんだから攫われちゃうじゃん。」

「分かった。僕もアスクレピオスに行く。一人より二人だ」

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