Wraith:13

「ソフィアさんに確認取りました。このお墓のお家、霊媒師さんで、ここから割と近いって、二人とも」

それを聞いて、ツバキはぱっと顔を輝かせた。まだ望みが絶たれたわけではない。

「文成さん、行ってみましょう!」

文成も気を取り戻した。

「ああ、僕も行くよ」

「じゃあ決まり。行きましょう」


「ここが、霊媒師、雨岡楓さんのお家……」

辿り着いてみると、そこは一軒家だった。今時一軒家は珍しい。およそ百坪ほどではあるが、地価は非常に高く、土地代だけで都内にアパートが建てられる。

「なんだか、お屋敷ですね」

「今時そこそこ大きな一軒家をきちんと持ってるのか……」

気圧される二人と怪訝そうな顔の文成。それを見て30年前とそこまで日本の土地事情は変わってないのだからやはり他人と比べて金銭感覚が世間ずれしているなという表情をする陽奈。

「二人とも行かないのか?」

「ブンセー。先行って」

「私たちは後ろからついて行きます」

「そうか」

文成が家のベルを押して、名乗る。

「私、残雪派、白雪探偵事務所の白雪文成と申します。事件の調査のためお伺いしました。お話を聞きたいのでお時間を頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」

呼鈴の向こうから、40代ほどと思われる女性の声がする。家主の雨岡楓だ。

『残雪派?』

「はい」

『あなた、組織の中で発言力はある?」

不躾な質問だが当然のことと文成は思う。現代日本で一番世論を動かす力があり、世界にもある程度影響力のある組織が残雪派だ。知名度のある組織名を利用したと疑われるのも無理からぬことだろう。

それにしても、と文成は思う。30年前の自分の特異性と、それを自分がいないのにも関わらず30年間維持し続けたソフィア。昔の自分を捨てたつもりでいても、あたかも自分の「亡霊」が自分を追いかけてくるようだ。残雪派の名前は便利だが、「雪河智絵」に頼る自分にほろ苦さを感じる。

「それなりには。ソフィアと太いパイプがありますので」

『わかった。今出るから少し待って』

楓が外に出てきた。やはり40代の女性である。少し疲れた顔をしている。その彼女が、文成の後ろを見て目を丸くした。

「はじめまして。雨岡楓さんですよね?」

「あなたは……?」

「楓……?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る