Wraith:12

「ここがツバキのお墓のある霊園?」

「意外と普通のところですね」

「普通じゃない霊園があるなら少し興味がある」

三人が三人とも好き勝手なこと言って、目的地を目指す。心なしか三人とも緊張した様子だ。


「ここだね」

「ここだよね、ブンセー」

それから三人とも何もしゃべらないまま、目的地に着いてしまった。

「どう?ツバキ。何か変わった様子はある。昔はこうだったーとか」

首を横に振るツバキ。

「いいえ、何もありません。何も起こりません」

ツバキのその言葉を聞いて、二人は驚きが隠せない。

「バカな。ぷでぃんぐはここだと言っていた。ここ以外にあるはずはない。間違いなくここが君の家の墓だ」

ツバキに掴みかかろうとする文成に対し、陽奈は少し落ち着いている。だから、陽奈は文成を止めた。

「落ち着いて、ブンセー。ぷでぃんぐさんが間違ってる可能性とか、嘘をついてる可能性を普段のブンセーなら疑うんじゃない?」

「普段の僕なら確かにそうだ。だがぷでぃんぐは、彼女は絶対に僕に嘘は言わない。間違った情報も言わない。どういうことだ……」

文成は墓誌を見て、さらに驚いた。

「ツバキの名前が、どこにもない」

「どういうことだ」と「ありえない」を繰り返す文成に聞こえないように小さくため息をついて、陽奈が言う。

「とにかく、そういうことならツバキはここのお墓には入ってないってことだよね?そうすると次に疑うべきことって何?」

「誰か別の人の家のお墓、ってことですよね」

ツバキが応じる。

「普通に考えたらそうだよね。でもそこでポンコツになっている相棒はたぶん別のことを考えてる。考えてるけどきっとそのことがあり得ないからそこでポンコツになってる。私もそう。つまり」

気分を落ち着けるように一呼吸置いて、陽奈はさらに続ける。

「ツバキ。あなたは今もまだ生きている。生きているのに幽霊になってこうやって私たちのところに来ている。ここからは完全に私の推測になるのだけれど、30年前に事故か何かで植物状態なんじゃないかな。それで、ずっと生霊を出してさまよっていた。もしくは、30年も経ってしまって今死にそうになって生死の境をさまよっている。あくまで女の勘だけれど、きっとどっちかだと思う」

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