Wraith:5

「うん、決めた。私ツバキを助ける」

陽奈が独り言のようにそうつぶやいた。

「その人助け、私も乗ってもいいかしら」

「ありがとうございます、ソフィアさん」

「そうと決まればまずは文成の説得からか。私に考えがある。任せてちょうだい」


†同日夜 白雪文成宅

「ブンセー。話があるんだけど」

「駄目だ」

「まだ何も言ってないじゃん」

「何も言ってなくても未来を視た。もう一人人助けができるほど僕には余裕がない。残念だけどね」

「困ってる命を天秤にかけるっていうの」

「……そうだ。それにツバキは命ではないだろう。ちょうどいい。その言葉がこのタイミングで出てきたということは間違いなくソフィーの入れ知恵だ。いくら困っている人がたくさんいると言っても個人の手には限りがある。ということは助けるものを決めなくてはいけない。その差がどこにあるかは今回の場合とても簡単だ。困っている人が生きているかどうかで決めてしまえばそれでいい。だから僕はツバキを助けることはできない。レイスの件で僕は手一杯だからね」

「世界は平等であるべきだよブンセー」

「そうだ。その意見には僕も賛成だ。だからこれから一つ相談をしようと思う。聞いてくれるかい」

「聞くだけなら」

「ありがとう。助かるよ。僕はこれからさっさとレイスを倒しに行ってくる。少々手荒な手段で僕としてはあまり好みの手段ではないけれど、レイスに洗脳されているたくさんの人を救うためだ。やむを得ない。この事件が前例となって何かできないだろうかなどという邪な思いがないわけではないが、それよりも人助けを優先すべきだ。僕は事件のために存在しているのではなくて、人助けのために存在する探偵だからね。そこまではいいかい?」

「うん」

「間違いなく解決までには数日かかってしまうだろう。その間にハルとツバキはツバキの死についての調査をしていてもらいたい。ソフィアの持っている事故の記録を検索すれば瞬く間に片付く話だろう。僕はレイスの件が終わり次第君たちに協力する。それでどうだい?それでも僕のことを見損なうかい?」

「ううん」

「ありがとう。じゃあ決まりだ。早速行ってくるよ」

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