Wraith:4

資料にはたくさんのことが書いてあった。

まず幽霊はしたいことしかできなくなってしまうということ。死んでしまったのに生きているなどという相反した状態であるがために、「ズレている」せいだと資料には書いてあった。ずれてしまっているために、そのズレを解消すること以外のことはできなくなってしまう。その最たるものが、事故死した際の記憶をなくしてしまい、そのせいもあってひたすらに自分の死因を探ろうとするというもの。死因を忘れ死因を知ろうとするのもそのせいによるものだ。最も多い事例が事故死した後、その事故死の原因を探ろうとする。事故死の理由を知りたいがために記憶をなくしているのではないかとさえ思われるほどだと資料には書いてあった。

ふたつめ。文成も昔は幽霊であったこと。不幸な事故により命を落とした文成は、命を落としてしまった結果幽霊となって10年ほどの間彷徨い歩いていたのだと言う。命を落とした時は22歳。電脳を再生したときに幽霊が消えたことは奇跡だったと思うと書いてあった。普通は一度死んでしまって、幽霊にまでなってしまった時点で、その人格の「魂」と呼ばれるものは、元には戻らないのだ。逆に言えば、電脳でさえも魂を持ち得るということも書いてあった。あの世の存在もきちんと書いてあった。魂の再生と書き込みも後々できるようになるだろうという旨のことも、ソフィアさんの報告書にはあった。考えてみれば不思議なことだ。新暦になって、西暦時代にまやかしだと思われていた魂の存在が明らかになるだなんて。

オマケという扱いで、ソフィアさん自身が死後の世界に自力で到達した際の記録のことが書いてあった。明るい砂地、河原、雪原、大きな宿屋のような建造物。わざと電脳をハックさせるような形で死後の世界を見たがった幽霊を利用したとあった。

最後にという形で幽霊への対処法のまとめがあった。物理的な攻撃手段は一切通用しない。それは例えば会話だろうがなんだろうが一切は徒労に終わる。その代わり、したいことをしきってしまえば自然に消滅するらしい。しかし、それ以外の対処法は存在しないらしい。

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