Wraith:3

†アスクレピオス内食堂

彼女、陽奈に「ツバキ」と名乗ったその少女は、

「幽霊?」

「そうです。私は幽霊です」

幽霊であった。歳は、陽奈と同じかそれよりも少し幼いくらいに見え、普通の洋服を着ており、外見的に分かる義体化を全くしていなかった。

「証拠は?」

「証拠は簡単です。ほら、触れないでしょう?」

そう言いながら陽奈の手を触ろうとする仕草で陽奈に触れないことをアピールするツバキ。

「なるほど……。それで、話って何?」

明るそうな様子から一転して思い詰めた表情をするツバキ。それにつられて陽奈の顔も引き締まる。

「話というのは……、私の死んだ原因と、幽霊になった原因を突き止めて欲しいんです。だって、陽奈さんは探偵さんでしょう?」

「はい?」

「実は昨日幽霊として目覚めたばかりなんです。ここで困っているときにはソフィアさんに相談すればいいと分かって、ソフィアさんに相談しました。そうしたら、夏山陽奈さんか白雪文成さんが探偵で困った人を助ける仕事をしているから頼るようにって教えてくれて」

「そっちはどうでもいいの。死んだ原因と幽霊になった原因が分からないってどういうこと?」

「死んだときの記憶がスッポーンと抜け落ちてしまっているんです。ソフィアさんにそのことを言ったら幽霊にはそう珍しいことじゃないって教わって。お願いします。頼れるのは探偵さんしかいないんです」

「わかった。わかったけどちょっと待って。私もブンセーも間違いなく幽霊に詳しくないの。今日はその幽霊についての資料をソフィアさんにお願いしようと思ってきてるんだから。だからちょっと落ち着いて」


†ソフィアの自室

ノックをして、言う。

「ソフィアさん。陽奈です」

「入って」

「失礼します」

「ああ、無事に会えたのね。結構結構」

陽奈と一緒に部屋に入るツバキを見て、ソフィアが言った。

「それで、用件は幽霊についての資料よね。まとめておいた。……あら?文成は?一緒じゃないの?」

「ブンセーは幽霊を探知する機械を借りるって言ってでかけました。帰るのは今日の夜だそうです。そういえば、ブンセーとソフィアさんってどういう関係なんですか?」

「一言で言うのは難しいけど、簡単に言うと腐れ縁ね」

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