白雪文成と妖刀:4

強張った表情の月影に、同じく苦い表情の陽奈が文成に言う。

「何か良い解決策はないの」

暗い表情の文成が応える。いつものように不敵な表情をわざと浮かべて。

「いや、まだ救いがないわけではない。これはあくまで推測に過ぎないのだが、脱走した時点で自我を持っている可能性が否定しきれないだろう。僕の希望では最初の時点で既に持っていてほしい。そして、もしその推測が正しいとすれば、この事件は一番救いのあるパターンに近いものとなる。ここにいる月影の分身が最初の個体なのか、それとも別に月影の本体がいて、ここにいるのは分身に過ぎないのかという違い自体はあるがね。しかしこれ以上事態が悪化すれば刀の月影に負荷がかかり、その負荷のせいで月影の損傷や破壊につながるのは間違いない。自我を持った個体が存在する以上、そのような事態は避けようとするべきだろう。僕の体には冷たい機械の血が流れてはいるが、血も涙もない外道ではない。今後の僕たちのためにもなるものだ。できうる限りの手は尽くしてその上で諦めたい」

そのことを踏まえてのことなのだが、と一度区切る文成。

「月影、ここにはハルが持ってきた人間用の食料がおおよそ五日分ある。それでも構わないのだが、何かを食べよう、何かを食べたいという食欲はあるかい」

頷く月影。

「それならば話は決まりだ。食欲があって、自我を持っている。そういう個体は残雪派の総意で立派な一人の人間として扱うことという決定があるのを知っている。つまり、今のこの月影は僕たちの仲間として扱うべきだということだ。仲間を救うのは人のつとめ。よくない結果を導くことになるかもしれない。月影が生み出した他の怪物たちを殺して、そしてそれがよからぬ事態を招くおそれがある。それでも僕たちは月影、君を救うよ」

また頷く月影。

「よし、それでは作戦会議だ。僕たちは妖刀の月影本体に辿り着く必要がある。月影、君の本体がどこにいるか君の力で知ることはできるかい」

再度頷く月影。

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