白雪文成と妖刀:2
†新暦40年10月9日、洋上
そもそもこの月影、西暦時代にさかのぼるほどの由緒ある名刀であったという。だが、そのいわれの中には密やかな噂――名刀月影は妖刀である――もあった。そのせいもあってか、所有者は次々と替わり、最近になって妖刀ぶりがもはや隠れぬところとなった。
依頼を受けた残雪派は事実調査に着手したが、いまだに回収に取りかかれずにいる。こういう類の非科学的な噂はどこかかからもれてしまう。妖刀月影を手に入れた者には残雪派から懸賞金が出る、というまことしやかな尾ひれまでつきだし、金目当ての人間が山ほどいる、という有様になっている。
「で、月影自身がそういう奴らを片っ端から迎撃して回っている、と。月影の出す怪物って何か情報はないのか?」
動きまわるので、動きやすい残雪派のユニフォームに身を包んだ白雪文成が夏山陽奈に問う。槍も持ち歩いているので、いくら痩身とはいえ180cmを超す長躯と同じ長さの槍で、なかなかにかさばる見た目になっている。
「『白無垢のような和服に身を包んだ緑の黒髪、白い肌の美少女から美女まで様々。そのどれもが刀を使う。刀身の長さは実際の月影の2尺2寸から10m以上までやはり様々。怪物の大きさが大きければ刀身の長さもそれに比して長くなる』だって、ブンセー」
そう返す陽奈もやはり残雪派のユニフォームに身を包んでいる。武器はなく、素手だが、義足の瞬発力は文成のそれを上回る。
「徒手で来たのは失敗じゃないか、ハル。せめてこれを持っていくといい。出る前に動作確認はしてある。使い方は知っているよね」
45口径の拳銃と替えのマガジンを数個渡す。
「うん、ありがとう」
「本当はもうちょっと
「でも、槍一本で挑んで勝つつもりなんでしょう?」
「当然。
「とりあえずソフィアさんに頼ればいいと考えることはとてもよくないと思う」
「だから頼るつもりはないさ。聞いた程度の怪物なら槍でどうにかできる範囲だ」
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