白雪文成最初の事件:11

†新暦40年10月4日白雪文成宅

「ハル。君が僕の家に住むようになるのは良い。百歩譲って我慢しよう。しかし、僕の仕事を手伝いたいというのはおかしい。話が違う。ソフィーもそんなことまでは言っていなかった」

昨日決まって以来、僕の家でハルは寝起きしている。それだけでなく今日「仕事を手伝うことに決めたから何か仕事を寄越せ」だなんて言いだした。

「仕事ないんですか」

「いや、仕事自体は山のようにある。だが、大半はNEで、それも人格のない人造労働者ロボットで手が足りているということも事実だ。探偵などという職業自体の必要性でさえも少し怪しいほどなのだから」

そうは言っても。

「そうは言っても実を言うと残雪派はかなりの数の探偵を擁している。それは何故か。初歩的なことで、世界には解き明かすべき謎が転がっているからさ。科学の到達できない領域でね。」

「科学の到達できない領域?」

「そう。今回の事件のことをまとめるにあたり、少しソフィーに聞いてみたのさ。なぜいまだに探偵がいるのか、そしてその探偵たちは何を調査しているのかをね。最近になってからのことで、しかも秘密裏にことが進んでいることなのだが、世界には超能力と霊能力者、並びに西暦の時代に神や悪魔や天使などと呼称されていたもののことがらの存在を一部の科学者が証明しつつある。何を隠そう僕も超能力者の一人であるしね。科学の発展に探偵が役に立てると言うのなら、僕も協力しようと思ったのさ」

「なるほど。それで私の仕事は?」

「そうだね。じゃあ用心棒でもやってもらうことにしよう。そのためにもせめて僕に勝てるように毎日腕を磨いて待っていてくれ。それでいいかい?」

「了解」


†新暦40年10月5日 白雪文成の電脳に届いたスパムメール

事件解決おめでとう、探偵。僕は君のことを面白おかしく観察することに決めた。智絵。君の存在が僕にとって目障りなものになるように祈ってやまないよ。いずれ僕に君は挑むことになる。僕と君がまた出会うのにはかなりの時間が必要だろうけれどもね。なに、心配することはない。僕は偽神で君はNEだ。じきに出会う。偽神戦争はまだまだ始まったばかりなのだから。


ニコラス=コールウィーカー


白雪文成最初の事件――終。

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