白雪文成最初の事件:10

†10月3日10時アスクレピオス ソフィア自室

「さて」

僕たちを集めたと思ったら、唐突に一呼吸置くソフィー。

「連続空き巣事件は人間に対して嫉妬心を燃やすクソ野郎が電脳ハックをしたことによるものだと分かったので無事連続空き巣の件でハルナは立件されず」

さらに一呼吸。

「コニー=B誘拐事件は私を陥れようとしたどこぞの変態が私を呼ぶエサとして持ってきた案件だということが立証されたのでやはり同様にハルナは無罪放免!」

ハルに向かって拍手するソフィー。

「おめでとう。これで私たちの庇護がなくとも問題なく一般人としての生活に戻れるようになりました。本当におめでとう。何か質問は?」

「はい、あります。コニー=Bの剣術は私にインストールされたままですが」

「ああそれね。持ってていいんじゃない?コピーだし。だから、ハルナ、あなたはコニーの技術を複製して持ってるってだけのただの一般人。多少武術の心得があることで、仕事と趣味の幅が広がるものね。改めて考えるとハルナは今回の事件で得ばっかりね。大いに結構。事件で幸福になるだなんて探偵と刑事を除けばあなたくらいじゃない?」

「ソフィー。僕を呼んだ理由は何だ?これなら別に君とハルだけいれば終わる話じゃないか」

「折角のめでたい話なのに水を差すだなんて幾分せっかちね、文成。それだから52になるまで目立った色恋沙汰もないままなのよ」

30年分の人生がないのによく言ったものだとソフィーをにらみつけるがどこ吹く風だ。知らんぷりをしている。

「それでは次。ハルナ、あなた決まった家がないでしょう」

「はい」

「ちょっと手が空いた時にこっそり調べたんだけれど、あなた孤児なのね。だから標準的な育児も受けられず、幼少期の足の怪我を義体化することで解決した」

「はい」

「両親が軍人で、そういうことになってしまった戦災孤児も実は15年前から傷痍軍人パープルハート保護の対象なのよ。つまり、受けるべきパープルハート勲章とその恩給を貰ってないって扱いになっている。本来は家と職をこちらから提供しなければならないのにね。それで、ここから先が提案なんだけれど」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る