白雪文成最初の事件:7

†新暦40年10月1日、朝、白雪文成宅~アスクレピオス

朝食が終わったタイミングで、通信が来た。

『手がかりを見つけたのでアスクレピオスに来てほしい』とのことだった。行って見ると、そこにはソフィーとハルの二人が既に来ていた。ハルの連続空き巣とコニー誘拐は現状まだバレていない。僕の家に「誰かしらに強制されて」侵入したというだけでごく軽い処罰だけで済まされている。

「欧州の方で何回かハルに接触している怪しい電脳を捕まえた。そのことについてハルは接触された覚えがないって言うの。つい二日前にも交信しているのに。コニーのパーソナルデータに関わりがある電脳かもしれないし、もしかしたら犯人かもしれないからちょっと行って『尋問』して、場合によってはとっちめて来てほしいの。OK?」

「了解。足は?」

「飛行機も考えたんだけど、もっと早い方が良いかと思って、ちょっと秘密兵器を引っ張りだしておいた」

「秘密兵器?」

にやりと笑うソフィー。

多目的機構MPF。元々NEたちが強襲用に使っていた追加装甲なんだけど、これが一番早く向こうの残雪派の施設まで飛べる。なんだったら目的地まで直接行ってくれても良いわ」

「安全性は?」

「NE専用だから、文成にしか使えない上に燃料代も高いけれど、今回ならソフィー・システムの経費で落としてあげる」

無視して話を進めるソフィー。

「安全性は?」

この件について無視するわけにはいかない。自分の命がかかっている。

「私の技術が信じられない?」

「……分かった。行ってくる」

「ハルナはとりあえず留守番。できればここにいて欲しい。もしも通信するようならこっちから接触を試せるもの」

「わかりました、ソフィアさん」


†同日、昼、白雪文成出発より四時間後。

「来た」

「何がですか?」

「通信。文成からじゃない。誰だろう。……!」

「誰ですか?」

「ハルナ。今からここにあるNEのところに行く。話をするためにね。たぶんそのときに私は怒って銃を発砲しそうになると思うから、どんな手段を使っても止めて。今から始まる勝負は、怒ったら負ける。なんとしても冷静でいなければならない」

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