白雪文成最初の事件:5
†新暦40年9月28日 白雪文成の事件レポートより抜粋
この三日間で、僕たちはというより主に僕がソフィーに協力をした結果、ハルの言う通販のサイトとその注文の痕跡が確認できた。さらに、通販サイト側はコニーの件を全く知らないことまで分かった。それだけでなく、本来通販されている『達人』は何の変哲もない普通のACシステムであり、また同じ日には他に購入者のいないこと、別の日には“本来の”『達人』が購入されていることも分かった。つまり何者かが通販サイトをハッキングして、誰かしらの手にコニーのACシステムのコピーが渡るように仕向けたということである。ここまで調べれば、あとは調査する人間の質よりも人数の量で勝負することで解決だ。あとはソフィーの暇な時間が少なくなる程度で、事件の解決の見込みが立ったと言ってもいい。探偵としての最初の事件は、知力も体力もほとんど使わなかった。未来視に至っては、全く出番がなかった。幾分退屈な結果ではあるが、大した事件にならなくて何よりと言うべきか。
さて、それはそれとして次はハルをどうするか、だ。個人的なことなのだが、僕は彼女をいまひとつ好きになれない。一人でなんでもできる気になっている、世間知らずの小娘。鼻と理想ばっかり高くって、自分ひとりではほんとは何一つできない愚か者。見ているだけで腹が立ってくる。今日だって僕がいなければどうなっていたことか。
†新暦40年9月28日 東京都内某所
「僕を呼んでどうしたんだい」
「ちょっと話したいことがですね」
ハルの話を聞く前に、嫌な感じがあったので、未来視をする。この直感だけは私を助けてくれる昔からの武器だ。
「っ!伏せろ!!」
ハルの頭を掴んで伏せさせる。このままでは弾けたトマトになってしまう。
「ぺぴっ」
おかしな悲鳴を上げるが知ったこっちゃない。慌てて僕も伏せる。
刹那、銃声が響く。
「鼻打った!へこんだらどうしてくれるんですかブンセー!」
「じゃあ流れ弾で死ぬ方を選べ。僕は君が死にたくないと思うだろうから助けたんだ」
そう、流れ弾。よくあるイザコザの末の、銃撃。今の日本じゃ大して珍しくもないことだ。どうせ銃で撃たれたぐらいじゃ死なない
「ところでハル、一体なんでこんなところに呼び出したんだ?」
「いや、ちょっと一人じゃ入りにくいケーキ屋さんがあって……」
「そんなことで……」
呆れて言葉も出なかった。
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