白雪文成最初の事件:2
†
今の世の中には二種類の人間がいる。世界を回すための大事な歯車と、経済を回すためのその他大勢。どちらも「人間」と呼ばれるが、その差は大きい。それだけではなく、世界を回すその歯車も二種類に分かれている。歯車その1、
†新暦40年9月25日15時、アスクレピオス近辺
「うわ」
小奇麗な黒いスーツに身を包んだ20代後半だと思われる日本人を私は目にした。身長も高い。180cmを超えている。どこからどう見ても“改良された”である。素人目にも相当な金と手間がかかっているNEだ。カタギの人間だとは思えない。だから、思わず声が出てしまった。当人は私に気づきもしない様子でアスクレピオスの方を目指している。肩が触れるほどの距離ですれ違ったこのNEでさえも、私が革命家だとは思うまい。しかし私は、”改良された”の敵になると決心しているのだ。
†同日19時、白雪文成宅
失敗した。失敗した失敗した失敗した!
上手くやっていた。悟られないように可能な限り、遠くから近くまで満遍なく出没して。痕跡は残さないように、残しても消し切れるように意識して実践して。持ってるデータを最大限使いまくって、確信の持てる家以外には入らないようにして。この20日間上手く立ち回っていたというのに!生体探知機は働かなかった。でも、誰かいる。槍を持って。まだ向こうは私に気づいてはいない。お願いだ。気づかずにいてくれ。気配と息を必死になって殺す。頼む、頼む、頼む、頼む。頼む…………!
「待っていたよ」
「……!」
とっくに見つかってたんだ。見事に騙された。ハメられた。でも、いくら相手がさっきの奴だからって、超高級NEだからって、刀にひるまないとは限らない。インターネットで買った、アレがあれば逃げ切れる。
「死ね!」
こけおどしでも言わないよりはいい。構えていた刀で思いっきり中段突きを放つ。すかさず下段も払い体勢を整える。これで相手が一瞬ひるみ、その隙に逃げられるはずと思っていた。
「甘い」
二撃とも槍使い男は防ぎ切っていた。全くのノーダメージ。それだけでなく。
「遅い」
刀を払われてしまった。
「この家を壊すのはまだ惜しいのでね。君、降伏してくれないか。君のことは調べさせてはもらうが、悪いようにはしない」
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