白雪文成最初の事件

白雪文成最初の事件:1

†新暦40年10月5日


~墓前にて~


ねぇサク。早速探偵として引き受けた困った事件があるんだ。残雪派の用心棒だったことのある男がいてね、名前をコニー=Bと言うのだが、このコニーがこの前の義体メンテナンス以来消息不明だって言うんだ。更には時期を同じくして、残雪派を狙った空き巣事件まで起こっているときた。犯人の目星は立っていない。少し興味が出てきただろう?


~白雪文成の事件レポートより抜粋~


コニー=ブレイド。人斬りコニー。新暦元年当時からまことしやかに囁かれる都市伝説である。曰く兎の脚を持った人間が善人悪党問わずでばっさばっさと切り刻むと言うのだ。共通するのは嘘をついたものが「獲物」だということ。それで、嘘をついてはいけないのだ、コニーに切り裂かれてしまうのだ、という語り口であったのだが、この話には真実がある。コニー=ブレイド。本名、クリス=ブランフォード。当時最先端技術の義体を用いた傭兵。160cmの人間サイズを保っておきながら亜音速で最大4kmを疾走するそれは、人造人間相手にすら不意打ちができたという。定期的に数年分の記憶をリセットしつつ金と任務さえあればどちら《人間、NE》の味方もしてきたようだ。そのコニーが先月末のメンテナンス以来消息を絶っているらしい。厳密には、メンテナンス中ソフィー・システムにアップロードしておいたパーソナルデータが全て、何者かにダウンロードされてしまうという「誘拐」をされたという。ソフィー曰く、担当には「厳罰」が処されたそうだが、データの行方はつかめていない。この事件がひとつ。

ふたつめ。雪河智絵の特徴的な話し方やその個性に憧れた者たちの互助組織、それが残雪派だが、コニーの誘拐と時期を同じくして、この残雪派のメンバーばかりを狙った空き巣が頻発するようになった。手口はどれも、窓をこじ開け、食料を奪って逃走するというもの。食料以外はこれと言った被害は出ていないという共通点がある。つまり、目当ては食料。ゆえに、犯人は間違いなく人間。

この二つの事件は当初無関係であると思われていた。しかし、この二つは密接につながっていたのである。

この事件に携わったのは9月25日から10月5日までだ。以下に詳細を記す。

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