雪河智絵最後の事件:2
†同日19時、都内某所 廃軍事施設入り口前
「さて……」
ソフィーが対対人多脚戦車の槍の手配をするのと、私がその訓練を積むのに多少時間がかかってしまった。でも、槍なら使い慣れている。まして今の文成の体であれば反応速度も運動速度も違う。生身の人間の比ではない。
「鬼が出るか蛇が出るか」
何が出ても、それは敵だ。今回に限っては生かして帰すつもりはない。情報によれば自動防衛装置だけのようだが。
†同日19時30分、同所、中央管制室
「何もなかったけれど……」
そう、何もなかった。敵襲の一つも覚悟していたのだが。
『待っていたよ、
「誰だ」
『お前を殺したNever Endsさ。一つ話がしたくてね』
「お前と話すことは何もない」
『そう言うな偽なる神よ。我らNever Endsは人間を、特にお前を憎んでいる。お前たち人間はさながら偉大なる造物主のごとくお前たちの似姿を造った。争いを疎みながらも争いを好み、愛し合いながらも憎み合う、矛盾を抱えた存在がその似姿を造った。その意味が分からぬお前ではあるまい』
「今更既知の事実である偽神戦争の原因を私に伝えたかったのか」
『ははは、やはり動じぬか。よかろう、それでは一つ忠告をしよう。お前の友人、ソフィア。あれは我が協力者よ。ここを用意したのも、ここに我を匿ったのも、お前がその体で蘇り、我を殺しに来たことを我に告げたのもソフィアだ。全て、奴の一人芝居よ』
「そうか」
『構わぬのか?お前は唯一の味方にさえも裏切られているのだぞ?憎くないのか』
「Never Ends。二つ言うことがある。貴様の本体はそこだな?」
言いながら未来視をする。
〈『左様。その槍で私を突き殺すのかね』〉
その台詞を未来視で確認して一突きにする。
「その通り。そして二つ目だ。この基地には情報回線がない。つまりバックアップを取って逃げることは不可能だということだ。それを踏まえてなのだが」
ミサイルの飛来する音が聞こえたと思うや否や、爆風が基地を覆う。
「19時33分にここにありったけのミサイルを撃ちこんで破壊するように、ソフィーには頼んであったんだ。ここに来る前にね」
意識が遠のく。そうだ、これでいい。これで、
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