第2話 出会い
「きゃっ!」
「あ、ごめんね?」
「もう、あやの!なにしてるの?すみません。」
「…そっくり。」
「双子ですから。」
「そうなんだ。前に気を付けてね、"あやのちゃん"」
なに、あのキザ男。
「なーにが、"あやのちゃん"だよ。気持ち悪ぅ~。」
「一度聞いただけで、名前を覚えるなんて、すごいねぇ。」
「あやの、ああいう男には気をつけて。」
「え?あ、うん。」
ありえない、考えられない。
絶対、浮気性のタイプだ。
「ゆりの、おなかすいた~。」
「じゃあ、そこのファミレス寄ってく?」
「寄る!」
「あやの!走ったら転ぶよ!」
「子どもじゃないんだから~!」
もう。
双子でも、あやのは私の妹。
母親を幼い頃に失った私たちは、自然と父親を助けるように行動するようになった。
あやのはおてんば娘だから、危なっかしくて。
「あのね、さっきキザ男にぶつかったんだから、反省しておとなしく歩いてよ。」
あやのを守るように行動してきた私は、子どもを守る親に見えるらしい。
「はぁい。…そーいえば、彼、なんて名前なんだろ?」
「あ、そういえばそうだね。あやのは名前覚えられたから、気を付けなよ?」
「何に気を付けるのよ。笑 ゆりのは慎重過ぎるよ。まぁ、それがゆりののいいところだけど。」
「おだててもなにもでないよ。」
「えぇ~…。」
まぁ、あながち間違いでもないけどね。
あやのは甘えんぼだから。
「だからいつも、周りを見て歩きなさいって言ってるだろ?」
「ごめんなさぁーい。」
夜、帰ってきたお父さんに今日のこと聞かれたから、全部話したら、案の定あやのは注意された。笑
「でもまた、2人同じクラスか。」
「うん。成績順なんだって。」
「ゆりのはトップだったんだって!今日あいさつしてたもん!」
「そうなのか?」
「うん。あ、でも、渡された原稿読んだだけだから。」
「ごめんな、父さん、仕事抜けられなくて」
「いいって。忙しいのわかってるから。」
いつもこうやって謝るお父さん。
ホントに、気にしてないから。
「困ってることは無いか?」
「大丈夫。もう、子どもじゃないから。」
「そう、だよな…。」
「そんな、寂しそうな顔しないで?ほらほら、すまーいる^^」
あやのとも、友だちみたいな関係だし。
今の生活を、苦だと思ったことはないからね。
Gemelli 蒼空 @aoi4
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