19話 奇襲

 箱の中で更に一週間が経っち、外ではまた二時間ほど進んでいた。


 「さて、この後は時間まで休憩だなフェイも良い動きするようになったし俺は満足だ。」


 翔が汗を拭いながらとても良い笑顔でフェイを見る。


 「ハァ…ハァ…、はい、あ、ありがとう、ござい、ました…。」


 フェイはそう言うとその場に倒れ込み休み始めた。


 「…お?…終わった?」


 部屋の隅でいつの間にか本を読んでいた龍忌はその本を閉じて翔に話しかける。


 「おう!久々に体動かせたからな!」


 「あー、そりゃあこんな一騎当千の体力お化けに付き合わされたらこうなるだろう。」


 「失礼な上間違ってないが、努力をしない他力本願の1人軍隊に言われたくないな。」


 「失礼だなそんな2つ名持ってないぞ。…そういえば最近ステータス見てないな。」


 「俺もだな…見てみるか。」




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 リュウキ ムラカミ 男 Lv error


 HP error MP error


スキル


 混沌 虚実ノ矛盾 枢要罪 負ノ眼 


 否定ノ眼 


称号


 全てを巻き込む混沌 悪平等 無関心 


 神に至る者 変動者 天変地異 

 

 ロリコン予備軍


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 ショウ ヒダカ 男 Lv over


 HP over MP over


スキル


 創造 全知ノ書庫 七元徳 正ノ眼


 肯定ノ眼 全魔法


称号


 巻き込まれし者 神に至る者 道徳者


 不動明王  元勇者(笑) 弄られ屋


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 「特に見すごせないもんがあるな…。翔は?」


 「…」


 「翔?」


 「…ふ…巫山戯んなぁぁぁぁぁぁあああ!!!ラフィの奴か!この称号に元勇者(笑)と弄られ屋なんて付けた奴は!?後で絶対に問いただして消してやる!!!」


 「え、まじで?マジで元勇者(笑)ついちゃったの?プッ…フフフフ…無理だ…耐えられねぇ…フフフ…。ラフィ…よくやった。」


 「リュウも笑ってんじゃねぇ!!何でお前はなんも変わってねーんだ…。」


 「…いや、ロリコン予備軍ってのが増えてたぞ。」


 「「……。」」


 翔と龍忌はそんな会話をして残りの時間を潰しているとそんな光景を眺めていたフェイから声がかかる。


 「あの…、」


 「ん、もう休まなくていいのか?もう大丈夫なかとりあえず着替えだな。」


 「あ、いえ、もう少し休みます。あと、私はこれで強くなっているのですか?」


 そんな疑問をフェイは翔にぶつける。


 「知らん。俺達の足下にも及ばん程に弱いが一般人相手なら充分だろう。この2週間程度でやったことはただの付け焼き刃だ。どのみち続けないと強くなれん。」


 と、龍忌が口を挟む。そんな言葉を受けフェイは明らかに落ち込む。


 「そう、ですよね。」


 「あー、とりあえずこの着替えとこの剣をやる。後で素振りでもして慣れてろ、必要なら模擬戦もしてやる。」


 翔はそう言って2本の剣と衣服をフェイに渡す。それらを受け取ったフェイは嬉しそうに表情を緩ませるがすぐにキッとした表情に戻る。


 「あの、良いんですか?こんな良いもの貰ってしまって。」


 「まだ子供のくせに遠慮なんかするな。俺らにしたらすぐに壊せるほど弱いからな。」


 フェイは再び2本の剣を見る。藍と紅のラインが刀身に入っている。柄にはそれぞれ月と太陽のようなレリーフが掘られており対になっているのだろう事がよくわかる。


 続けて衣服を軽く広げる。素材は翔と龍忌の着ている服と同じようなものだろう。明らかに強く柔軟性に優れていた。大きさは少し大きいと感じるが今後成長するにつれあっていくだろう。デザインはこれを着たまま宿で働いても問題ないほど自然な色合いと形だがところどころに紅と藍の色が入っている。


 「…ありがとうございます。本当に。」


 「礼を言うのは早いだろ、これこら大仕事が残ってんだからな。」


 「はい!」


 翔達3人はその後数時間程自身の休憩と肩慣らしを始めた。


 






 

 「よーし、そんじゃ行きますかー。」


 「あぁ、胸くそわりぃなぁ。どの世界の人間も嫌になるほど不平等だ。」


 「ハハハッ、そう言ってやるなよ。あ、そうそう昨日面白いこと見つけてよぉ。この後教えるからもう少し付き合ってくれや。」


 「はぁ、本当お前と居ると変なことに捲き込まれやすくなるな。勇者(笑)さんはさすがだな。」


 「まだ言うか…。さて、じゃあ準備はいいかな?2人とも?」


 「あぁ」


 「は…はいっ」


 「それじゃあ行こうか。」




 宿のある場所から離れ貴族街のとある屋敷の前で3人はそんな会話をする。2人の青年の声と1人の少女の声が早朝の貴族外に溶けていく。


 青年の2人は少女の前に立つとスキルを使い音もなく屋敷へと入るとその後を追い少女も屋敷の中へと入っていった。


 

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