16話 昔話②
「この町についてからも当然苦労しました。でもこの町の人達はほとんどが亜人でありいい人ばかりだったので馴染むのにそう時間はかかりませんでした。」
「この町について半年ほど経ったときでしょうか、この宿を現領主の方から頂きました。それまでは両親と私で周りの仕事を手伝ったりして稼いでいたのですがついに自分たちの店ができたのです。」
「この宿ができた当初は色々な方に泊まって頂きました。人間からドワーフ、獣人とフェイの体を見てもよくしてくれる方ばかりでわたし達家族はこの町で良かったと心から思っていました。」
「そして、今から半年前のことです。私達の父が亡くなりました。」
「原因は分かりません。それから徐々にこの宿に泊まった方が体調を崩したり大怪我を負うと言った事が増えいつしかこの宿は不幸を呼ぶ宿という噂が流れていました。」
「それからこの宿に泊まりに来る方はかなり減り今ではこんな見窄らしいものになってしまいましたが。」
「父が亡くなり家族は皆落ち込みました。特に酷かったのが母です。父が亡くなってから頑張って宿を経営していたんですがそういった噂が流れ始めだんだんと壊れていき今は孤児院の方々に面倒を見て貰っています。」
「そうして私達姉妹でこのよう宿の掃除をしているときの事でした。」
「貴族の方がきてこの宿とフェイをよこせといってきたのです。その貴族がどこで知ったのかフェイの体色が厄災の獣と同じで泊まった客が大怪我をするのも父が亡くなったのもフェイのせいだと大声で話し始めたのです。」
「宿を売れと行ってきた理由はこの土地の納税とのこてです。できなければ宿をそれが嫌ならフェイを…と。薄汚い獣人に人様の土地に入ってくるなという酷く理不尽な理由でフェイを売れという理由が白い体は一部の貴族にそういった趣味の人がいるそうで高値で買い取っているそうです。」
「当然断ったのですがそれから次第に先程のような取り立て人がきては店の中を壊したりフェイの悪口を流していきました。」
「そんなことが続き今日までに至っているという訳です。」
話し終えたキクリはそのまま少しうつむいているとヴァニタスや翔達を見てぎこちなく笑う。
「すみません…こんな話を聞かされてもご迷惑でしたよね。」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。つらい話でしょうに聞かせていただきありがとうございました。」
キクリの言葉にヴァニタスが返すと後で聞いていた翔と龍忌が立ち上がり部屋の外へ出ていく。
その後キクリとヴァニタス、ラフィはそのまま部屋で雑談をして過ごし姉妹とラフィ、ヴァニタスはそのまま同じ部屋で寝ることになった。
ノクタムの町が日に照らされ始める早朝。少し冷えた宿の中をキクリが走り回る。その音につられヴァニタスとラフィも目が覚め廊下に出ると、
「キクリさん?どうしたのですか?」
「フ…フェイが…フェイがいないの!部屋にも!トイレにも!わたし達が普段使ってる部屋にも!!この宿の中のどこにも!!!…う…うぅ、ひぐっ…。」
そう言って大声でキクリが泣き出す。出かけたのではとヴァニタスとラフィが問うが普段この時間はまだ寝ているはずであり起きたとしても宿の仕事をしていたりと無断で居なくなることがなかったらしい。
最近ではこの近くを昨日の取り立て人の人達がうろついていることが多く宿から出るなとキツくいっていたらしい。
「と、兎に角、マスター達とも話し合いましょう。」
ヴァニタスがそう言い翔達が泊まっている部屋を訪ねる。しかしいくらノックしても出てくる気配がないのでキクリの持つマスターキーで部屋を開けるとそこには…誰も居なかった。
「よーし、そんじゃ行きますかー。」
「あぁ、胸くそわりぃなぁ。どの世界の人間も嫌になるほど不平等だ。」
「ハハハッ、そう言ってやるなよ。あ、そうそう昨日面白いこと見つけてよぉ。この後教えるからもう少し付き合ってくれや。」
「はぁ、本当お前と居ると変なことに捲き込まれやすくなるな。勇者(笑)さんはさすがだな。」
「まだ言うか…。さて、じゃあ準備はいいかな?2人とも?」
「あぁ」
「は…はいっ」
「それじゃあ行こうか。」
宿のある場所から離れ貴族街の屋敷の前で3人はそんな会話をする。2人の青年のこえと1人の少女の声が早朝の貴族外に溶けていく。
青年の2人は少女の前に立つとスキルを使い音もなく屋敷へと入るとその後を追い少女も屋敷の中へと入っていった。
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