14話 蹂躙

 「あー、なんだ、どこに行っても面倒ごとに巻き込まれるのは翔のせいか?」


 「いやいや、そんなわけ…ない…と、思いたい。」


 「いやー、あるでしょこれは、多すぎるわよこの回数。新しい称号つけとかなきゃね。」


 「えぇ、これはちょっと…プッ、フフフ…称号にはトラブルメーカー(笑)とかにしましょう。…フフッ…。」


 「ほら皆も言ってるから認めろよ元勇者(笑)様。」


 「くっそ、皆していじりすぎだろ。」


 新月亭にきていた4人が部屋に案内されようとした時、入り口から柄の悪い男達が入ってきた後こんな会話をしていると中央にいたリーダーらしき人が口を開く。


 「あぁ?なんだまだこんなとこに来る客がいたのかぁ?止めとけ止めとけ、ここには死神がいるんだぜ?ほら、そこの白いのだ。知ってるか?こいつらの父親はそいつのせいで殺されたんだぜ?クヒヒッ…。」


 と、聞いてもない説明をペラペラと4人に話す男とその周りで嗤う取り巻き、そしてそれに絶える姉妹2人。


 「よく見りゃ綺麗な女を連れてんなぁ?こんなとこに泊まるより俺達がもっと良いとこに泊めてやるぜ?」


 最後に男がこう言った後取り巻きの男達もそれに便乗して盛り上がる。


 「「ア?」」


 という声がしたのは気のせいでは無いのだろうしかしそれを聞いたのは姉妹2人とヴァニタスとラフィのみだった。


 「「てめぇら…人の女に手ぇ出して何も無いなんて思わねぇよなぁ?」」


 翔と龍忌は今度は男達にも聞こえるほどの声で言う。それを聞いて男達はさらに嗤い始める。


 「プッ…アッハハハハハッ!!なに?この人数さで勝てるとでも思ってんの?やれるもんならやってみ…ガシュッ!」


 リーダーらしき男が翔達を挑発していると途中で言葉が切れる。その直後赤い液体が飛び散りドサッと言う音が響く。


 う、うわあぁああああ!!!

 ヒッ…


 と、言った男達の悲鳴や困惑の声が店内に響く。姉妹は目の前の光景に腰を抜かし床にへたり込んで脅えた眼をして目の前にあるリーダーだった下半身のみの肉界を見ていた。


 「さぁ、次はダレがこうナリタイ?」


 龍忌が口を開くがどことなく口調がおかしくなっている。それをみた男達はすぐに入り口へ走って行く。


 「逃がすわけねぇだろ?」


 ドドドドドッ!!!


 という音が響くと同時に入り口には無数の剣や刀、斧、槍等が刃を男達の方へ向けつきだしていた。


 走っていたせいで勢いの止まらない男達のほとんどがその刃に躯の至る所を貫かれ息絶えていく。


 「ヒッ…お、お願いします…命だけは…。」


 かろうじて残った男の一人がそう言い出すと他の男達も同様に命乞いを始める。それを無視し、龍忌が前に出ると黒い靄が体中から溢れ1つの大きな顎を作り出す。


 ーイたダキまスー


 龍忌がそういった直後その顎は息絶えていた男達をもまとめて喰らい跡形もなく宿の中から消した。


 

 



 ヴァニタスとラフィは翔と龍忌の虐殺を始める前腰を抜かした姉妹を魔法で眠らせていた。


 「えっ…とここは、…っ!そうだ、フェイは!?」


 「隣で寝ていますよ。落ちつきなさい。」


 「えっ、…はぁ、良かった…。あの、…あの人達は?」


 「あの2人ならラフィに説教されていますよ。話しも聞かずに暴れ回ったので店内の修復もしています。ちなみにここは案内される予定だった205号室ですよ。」


 「そう、なんですか。ありがとうございます。それと、あの男達は?」


 「…死にましたよ、全員。」


 「そう…ですか。すみません、あたし達の問題に捲き込んでしまって…。」


 「はて、何のことでしょう?迷惑をかけたのはむしろわたし達の方でしょう。気にする事なんて無いのですよ?ですが…そうですね何があったのかは聞いても宜しいですか?」


 「…はい、かまいません。これはあたし達、獣人の住む里でフェイが生まれた時からの話です。」

 

 


 


 

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