12話 救済
ノクタムの町からほど近い森の手前で翔と龍忌、ヴァニタス、ラフィ、メリッサでこれまでの経緯を話している。
周囲ではオークとゴブリンの集落から連れ帰った女性達と黒龍が戯れていた。
最初は互いに警戒していたが龍忌が撫でていたところを向にきたヴァニタスと女性達数名が目撃し一人の女性が撫でたいと言った所から徐々に絆されていった。
そしてその女性というか少女は件のシュリルという領主の娘だそうでなかなか肝が据わっているなと言うのが龍忌と翔の率直な感想だった。
当の本人であるシュリルは金髪に金の瞳、軽装ではあるが素材が良いのか気品のある町娘風の服装に身を包んでおり
「よし!あっちよ!…今度はあっち!ふふっ…すごいわ!もっと奥に行きましょうよ!」
と龍に乗って森の上をあちこち飛び回っている。元々かなり活発な子らしく今はオーク達に捕らわれていたと思えないほど元気だった。
「…シュリル様も元気なようで良かったけど、あんたらの話は信じがたいもんだねぇ。」
いままでの話を聞き頭を抑えながらそんなことを言っているメリッサと
「そう言われても事実ですからね。…とりあえずギルドまで戻りませんか?シュリルさんの報告も兼ねて。」
「そうだね、そうしようか。そろそろ暗くなるし。」
マイペースに話を進めるヴァニタスと龍忌がそんな会話をする。
「あぁ、そうだあんた達はまだギルドの登録していないんだろう?とりあえずあんた達4人全員Cランクからにしとくよ。明日にはできてるだろうから取りにきな。」
「ありがとうございます。それでは戻りますか。」
「そうね、私お腹減ったんだけど。ショウいいとこ知らないの?」
「無茶言うなよ、今日着いたばっかだぞ。」
「僕たちも何か食べたいな。メリッサさんどこかいいお店無いですかね?」
「マスター、私も一緒にいいですか?」
と4人は思い思いの話をして立ち上がる。
「…そういえば治療はすんだのかい?」
「あ、忘れてたな。今からやるから全員連れてきてくれ。」
龍忌の質問に翔が答える。その後黒龍たちといた者全員を翔の前に座らせる。
「教典『七元徳』:
翔がそう言うと彼女たちの頭上から光が降り注ぎその一体を明るく照らす。一人一人に降り注ぐ光は徐々に収まり次第に元の暗さへと戻る。
「さて、これで大丈夫だと思うけど後は自分たちで確認してくださいな。」
と翔が言いづらそうに言うと女性達はその言葉に首を傾げる。
「あれよ、膜も戻ってると思うから一人になったときとか家に帰ったあと確認して見なさいって事よ。」
そしてラフィが続けてフォローすると女性達は驚いた顔でラフィを見ると自身のお腹を見つめる。
そしてお腹を摩りながら詳しくは分からないだろうが自身の体が襲われる前の体型に戻っていることを確認し涙を流す者もいた。
うぅ、あ…ありがとう…ござい…ます。
うぅっ、ひっくっ…うぅ。
といった声が女性達から聞こえてくる。
「さて、じゃあ全員で戻るか。」
「黒龍達もおいで、戻るよ。」
そうして捕まっていた女性達と黒龍に乗って遊んでいたシュリルも集まると黒龍が龍忌の広げた影の中へ入っていく。ただ、シュリルに尾の先をつかまれ困惑している一匹を残して。
「…」
シュリルは尾を掴んだまま下を向き黙っている。それを見て黒龍が龍忌の方を見る。龍忌はその光景を見た後頷くと広げていた影を元の大きさまで戻しシュリルの方へ歩み寄っていく。
シュリルは龍忌の足音が近づいてくる度にビクビクとしている。
やがて龍忌はシュリルの目の前に立った。すると龍忌はシュリルよりも少し目線が下になる位置にまでしゃがむ。
「…大切にして上げてくれよ?」
と、言うとそのまま翔の元まで歩き
「じゃあ帰りましょうか。空腹で倒れそうだ。」
と、おちゃらけて言った。
シュリルは顔を上げ龍忌を見てあっけにとられたのかそのまま動かなかったが黒龍が顔を近づけシュリルを舐める。
シュリルはそれに驚き黒龍の方を見るとそのまま抱きつき声を上げて泣いていた。
シュリルが泣き止み全員が町に向かい始めると龍忌はミル王女の時と同じように説明した。そうしているうちに町へ着く。
町の門には大勢の冒険者達が町へ入るために並んでいた。
「ん?…普段からあんなに多いのか?この時間は。」
「いや、多分シュリル捜索の件で町から出ていた冒険者がほとんどじゃないか?」
「あぁ、じゃあ時間かかるかな。」
そうして門までかなりの時間待つことになったが冒険者がほとんど兵と顔に地味だったのか案外すぐに列が捌けている。
そうして翔達の順番が回ってくるとメリッサが兵に事情を説明する。
時折、兵士が驚いた表情でこちら側を見てくる。少しして兵とメリッサが近づくと入っても良い許可が出たのでそのまま中へ入った。
女性達はそのままそこで解散し翔、龍忌、ラフィ、ヴァニタスそしてメリッサの5人はシュリル捜索の依頼について説明をするためギルドへ向かう。
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