8話 ランク

 「あ、すみません。」


 肩がぶつかってしまった男は不機嫌そうな顔で此方を見ると一瞬呆け嗤いだした。


 「オイ、ガキィ、ここはお前みたいな奴が来るとこじゃねーぞ?ククッ…」


 嗤っている男に対し素っ気なく「はぁ?」と言いそのまま壁のほうへ向かう。


 「オイ、待てや。無視することはねーだろ?お前に冒険者がどんなもんかレクチャーしてやるよ。だから授業料よこせや。」


 続けて搦んでくる男を今度は完全に無視するといきなり「無視すんなゴラァァ!!!」と言って殴りかかってくる。しかし翔がそれを躱すと男は更に激高し「クソがぁ!!」と叫びながら剣を抜き、斬りかかってこようとした。


 それを見ていた冒険者たちは翔に対し哀れむような眼を向ける中1人だけ笑っているものがいた。


 剣を振り落とすとその剣は肥大化し幅が

40㎝ほどありそうな大剣に変化する。翔はその剣を難なく躱すと大剣はそのまま床に当たり床板を割るとさらに下の地面に当たり轟音と土埃が巻き起こり周囲を包む。


 土埃が晴れるとそこには大きなクレーターができておりかなりの衝撃があったことが予想できる。しかし周囲の目はそこではなくそれを起こした当事者に向かっていた。


 剣を振り落とした男は光の棘が全身に巻き付き棘が食い込んでいる。さらにその周囲を白い光でできた幻想的な鳥かごのような檻が男を閉じ込めている。中に居る男は暴れ回っているが音が一切漏れてこない。


 この異常な光景に見ていた冒険者は絶句した。そしてこれを成した張本人であろう翔は体に着いた土埃を払うと何事も無かったかのように壁に取り付けられた依頼とにらめっこをしていた。


 



 数分後…


 なぜかギルドの2階にあるギルド長の部屋で拘束されている翔がいだ。


 「…あのー?何で俺は倚子に座らされて縄で縛られているんでしょうか?」


 「まぁ、そう言うなよアタシも何でこうなったのか理解できてないからねぇ」


 翔の目の前に机を隔て座った居るのは幼女だった。黒い魔術師の服装に身を包み椅子に座っているが机との大きさに合っていない明らかに小さい。その割には言葉遣いが年寄り臭い。これはあれだ。ロリババアって奴だ。


 「なんじゃ、突然黙りおって。」


 「いえ、それで俺はなぜ縛られているんでしょうか?」


 「そうじゃのう、あのバークを瞬殺したからじゃな。彼奴は素行は悪いが腕はランクCはある強者の部類でのう、そんなバークを瞬殺する奴をこのまま下っ端のランクからさせるとまた今回のように絡んでくる奴も居るんじゃよ。その度にアタシが呼ばれるなんて面倒じゃ無いか。」


 ギルド長は話し続ける。


 「なので主をギルド長の権限でCまで上げることになったんじゃよ。ランクCは実力さえあれば勝手に上がっていくんじゃがこれ以上は依頼をこなした数やギルドの信頼に関わってくるんでな実力が高くてもこれ以上は上げられんのじゃよ。」


 まさか面倒臭いなんて理由で呼ばれてランクが上がるとは思っていなかったのだろう呆れている。


 「まぁ、上がるなら嬉しいんだけどさいい加減解いてもらえないか?」


 翔がそう言うとギルド長は笑い出す。


 「そうは言ってもあんた、自力で抜け出せるだろう?アタシより強いんだから。アタシは《真眼》って、スキルを持っててね本来のステータスを見ることができるのさ。あんたのステータスは伝説のSランクすら超えてるよ。」


 ギルド長がそう言うと翔は自身を縛っていた紐を手を使わずに切り立ち上がる。


 「ふむ、まぁ俺のステータスは他言無用で頼むよランクの件はありがたいし上げてくれると助かる。用件は終わりか?」


 ギルド長はその後真剣な顔に変わる。


 「実はなこの町の近くにオークキングが出現したらしいのだ。しかしノクタムに居る冒険者はさっき主にやられたバークしか手練れがいなくての、オークキングの討伐とその巣窟の殲滅、たのまれてはくれんかの?」


 ギルド長が言ったあと翔は少し考えると


 「良いですよ。」


 と、返事をした。そして、階段から慌ただしい足跡がなる。 ギルド長と翔の居る部屋にバンッ!と勢いよく扉を開け入ってきたのは下に居た受付嬢と思われる女性だった。


 「ギルド長!町長の娘様…シュリル様がオークに攫われたとの報告が!」


 それを聞いたギルド長は立ち上がり翔と共に下へ向かうとすぐにシュリルの捜索依頼が出されギルド内にいた冒険者はその報酬に眼を向け躍起になっていた。


 その時ギルドの入り口から間の抜けた、そして聞き覚えのある声がなる。


 「すみませーん。何の騒ぎか知りませんがここに翔は居ますかー?」

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