7話 冒険者ギルド

 ノクタムの町…セルシア王国にある大都市の1つ。住人はドワーフや獣人が多く近くにある鉱山からとれる金属や石を使った様々な加工品が有名である。


 「…やっと付いたとこ悪いんだけど。僕は何か喰ってくるよ先行っててね。」


 「いきなりだな。じゃあギルドで待ってるよ。」


 シャーリーはそんな翔と龍忌の会話を聞き会話に交じる。


 「どこに行くんだ?町に入れば食い物くらい奢るぞ?」


 そのことに龍忌が答える。


 「あー、普通の食い物じゃあ駄目なんだよね。とりあえず限界だからあとは翔に聞いてよ。それじゃあまたね。」


 そう言うと龍忌は真っ直ぐ森へ向かって歩いて行った。


 残されたシャーリーは言われたとおり翔に説明を聞く。


 「えーっとな、アイツのスキル《混沌》は完全に自分の魔力のみで扱わなければならないものなんだが生み出すものによって必要な魔力が変わってくる。例えば鉄なんかも生み出せるけどそれには魔力は少量で良いと言っても常人からしたらかなりの量を使うけどな。それで今回アイツが生み出下のは今ミルの影に居る黒狼の2体、要はアイツは今回新たな命を作ったんだよ。それには鉄を生み出すよりも果てしない魔力が必要になる。そこで減った分の魔力をまた別のスキルで魔物から吸収するんだよ。」


 「なるほどで、では彼は魔物から足りない分の魔力を補充するために森に行ったのか。」


 「そういうことだな。」


 それを聞いていたミルは自身の影を見つめる。


 「安心しなって、それだけミルを信用したんだ。でなきゃあの疑心暗鬼の塊みたいな奴が他人に自分の混獣を渡すわけ無いからな。ミルはその黒狼2体を大切にしてやりゃー良いんだよ。」


 そう言って翔はミルの頭をなでる。ミルはそれに目を細め気持ちよさそうにしている。


 ミルがオークとゴブリンに襲われてから少ししか経っていないのにすでに翔と龍忌に気を許しているのは道中の馬車?の中で龍忌と翔に気さくに話しかけられていたからだろうか。シャーリーは今目の前の光景を見ながらそんなことを考えていた。


 するといつの間にか順番が回ってきたようで門番から声がかかる。


 「次!この魔道具に手をかざせ!」


 と言われたとおり水晶の形をした魔道具に手をかざすと水晶は青く光る。


 「よし!通って良いぞ!次!」


 と、言われそのまま門へ入る。


 「おぉ…凄ー人ごみ。」


 目の前には広い大通りと両側にある露店そしてその店を行き交う人間とドワーフや獣人と言った人達であった。


 「どうした?そんなところで突っ立って?」


 後からシャーリーが声をかける。


 「…いやぁ、こんなに賑わってんだなと思ってなかったからな。それに獣人にドワーフもなかなか見なかったからな。」


 「確かにこの町はセルシア王国の中では亜人が集まる町として有名だな。…さて、ここで解散するか?」


 シャーリーがそう言うと翔は眉を寄せ困ったような表情をする。


 「…すまんギルドまで案内しよう。そのあと自由行動と言うことでどうだ?」


 「すまない、ありがとう。」


 そうしてシャーリーと翔、そしてミルは3人でノクタムの町を見て回りながらギルドへと向かう。


 ノクタムの町は北が商業、東にギルドなどの中枢機関、南に貴族街、西に平民の住宅街と大まかに分けるとこんな分布になる中央には広場が設けられておりそこは商業エリアよりもさらに人で賑わっていた。


 見て回っているといつの間にかギルドへ着くと目の前には剣をクロスさせ前に盾を置いた形のマークがあった。屋根は赤く壁の色もこげ茶色だったので周囲の赤いレンガ出て来た建物とは違い目立っていた。


 「それではわたし達は宿を捜すことにするよ。また三日後にな。」


 「…またね、しょうにぃ。」


 ミルの言葉に驚きながらも翔も返す。


 「また三日後になミルにシャーリー。」


 そして2人と別れると翔はギルドの戸を開ける。


 ギルドの中はほぼ男達でうまり昼間から酒を飲み叫ぶ輩が多かったが、自身の食事に集中していたり壁に取り付けられたボードを見ている人もいる。そして奥のカウンターには仕切られた受付があり人が並んでいる。


 その中に1つだけ誰も並んでいない受付があったので翔はそこへ行くとそこには髪で目が覆われか赤い髪の女性が居た。


 「すみません登録お願いします。」


 翔がその女性に話しかける。しかし何の反応も無かったので続けて聞くがやはり反応が無かった。なので今度は肩の辺りを叩いてみる。


 「あの?聞いてますか?」


 すると叩かれたことに驚いたのか体がビクッとはねると顔を上げ翔を見る。そしてすぐに青ざめ


 「あ!は…はい!ご用件ふぁなんでしょうか!」


 と、慌てて言いながら机の上にあったペンや紙を散らかしてしまっていた。


 「あー、まずは落ちついて深呼吸して下さい。」


 そう言うと彼女は深く深呼吸をするといくらか落ちついたのか此方を見る


 「すみませんありがとうございました。それではご用件をお聞かせ願いますか?」


 「あぁ、登録したいんだけど良いかな?」


 「かしこまりましたそれでは此方の紙に記入していただくのですが名前と戦闘スタイル主な武器を書いていただければ基本は充分です。」


 そう言われ紙に記入していくが読み書きはできるのだろうかと思っていると案外できるものだった。恐らく《全知ノ書庫》の効果なのだろう。


 名前はショウ、戦闘スタイルは魔術師、武器は刀と書いて提出した。

 

 「それではショウ様少々お待ち下さい。」

 

 そう言われたあと少しして長方形の名刺のようなものを渡されるとそこに血を一滴垂らすように言われその通りにする。


 するとその名刺のようなものに先程書いた内容と右上にGの文字が現れる。


 「そちらがステータスプレートになります。これから冒険者についての説明を行いますが聞いて行かれますか?」


 そう言われた翔は短く頼むと言うと彼女は冒険者についての説明を始めた。


 冒険者には一般的にG~Aの7つのランクが存在しており対応したクエストか依頼をこなすとポイントが貯まる。このポイントは依頼を達成するたびに1増え一定数貯まることで次ランクへの昇格試験を受けることができる。試験には自身よりもランクの高い相手を試験管として模擬戦を行い認められれば昇格することができる。しかしGランクは見習いという扱いになっており回数をこなせばFランクへ昇格する。そして、ランクには例外のSランクが存在し冒険者ギルド本部のギルドルーラーと各国の王2人以上に認められた者のみ昇格する事が出来るランクである。


 ギルドのクエストと依頼にはランクがつけられており自身のランクより1つ上のものまでしか受けることができない。失敗した場合はギルドに報告し、ポイントが1減らされる。


 「…と、まぁここまでが基本の情報です。何か質問はございますか?」

 

 「ありがとう、助かった。それじゃあ依頼でも見てくるよ。」


 そう言って翔が壁一面貼られた紙を見に行くと途中、肩が男とぶつかった。


 

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