5話 追放された。

 少し前…


 勇者達4人は騎士達と魔道士達の訓練した後、部屋にあるシャワーを浴びる為に部屋に向かう。いつもなら4人が一緒に行動し自室の前で別れるのだが、今日は裕志と雪が王に呼ばれ正義と楓は2人は先に部屋に向かう。


 「「っ…」」


 正義と楓は前から歩いてきた2人に驚いた。この場に裕志が居なかったのは幸いだろう。


 「…?なにか?」


 目の前の一人…龍忌が何も言わない2人に聞く。


 「…なぁ、何で君たちは訓練に参加しないんだい?」


 「それは僕たちの勝手でしょう?なぜ合わせなければいけないので?それに元々他人でしょう?貴方達は勇者なんですから僕たちに構う必要など無いでしょうに。」


 正義の問に龍忌が答える。


 「俺たちはともかく君たちは一般人並みのステータスしかないんだよ?ずっと王に頼るつもりなのかい?それに旅に出るっていってたけど尚更訓練を受けるべきじゃ無いか?」


 正義は龍忌に再び問うが今度はため息をし興味もないのかそのまま歩いて行こうとする。


 「まってよ!何でそんな自分勝手なの!?この世界の人達は魔王に苦しめられてるのに!少しは協力しようとか思わないの!?」


 楓が叫ぶ。その声にその場に居た3人とたまたま近くに居たメイドや執事も驚かせた。そして翔が振り向くと


 「…なら自分の目で確かめろよ。俺達は俺達のやりたいようにやる。…リュウ先行くぞ。」


 「せっかちやなー。それじゃあね勇者のお2人さん。」


 翔と龍忌はそのまま歩いて行ってしまった。その場に残された2人は数秒たっていたが正義がすぐに楓をエスコートして自分たちの部屋がある方へ歩いて行った。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 王の執務室には王と姫、魔道士と騎士がおり。扉の前にいる2人…翔と龍忌を見ていた。


 「…なぜ呼ばれたか分かるか?」


 王は2人に問いかける。それに対し2人は頷き龍忌が答える。


 「僕たちが王の心遣いである訓練をせず図書室で本ばかり読んでいるからでしょう?」


 この回答に頷く王は続けて問う。


 「分かっているならなぜしなかったのだ?」


 「正直に答えましょう。面倒だからです。」


 この答えに王は青筋を立てる。


 「もう一度聞く。…なぜ参加しない?」


 「面倒だから…です。」


 流石に王は我慢できなかったのかその答えを聞くとすぐに


 「この2人を今すぐ王都から追い出せ!2度とこの王都に立ち入らせるな!!」


 王が叫ぶと周りにいた魔道士が何かを唱えると地面から鎖が現れ2人を縛っていく。それが終わると騎士が剣を2人に向けながら王都の外まで連行していった。その様を王と姫は憎らしい敵を見るような目と汚物を見るかのような目で見下していた。


 その途中に王都では騎士が黒髪黒目の青年2人をつれ王都の外へ向かっていることで少し騒ぎになったという。





 「オラッ!2度と入ってくんなよクソガキども!」

 

 王都は高い壁で囲われており周りにすむ魔物を入れないようになっている。さらに門には常に2人の騎士が配置されており通過する時は騎士の持っている水晶に手を当て問題が無いと判断された者のみ入ることができる。この基準は犯罪歴が無いことと王の命令で入れるなと言われた者かどうかの2つである。


 今回追放された翔と龍忌は騎士から見えない位置まで来ると盛大に笑っていた。


 



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 「ふむ…、あの2人は何かと危険なのか安全なのかわからんのう。神の気配もあるがこの世界の者でも無い。他の4人も問題ではあるが特に影響は無かろう。近いうちにあの2人に会わなければならんかのう?いや、4人か?…まぁよいか、では儂はあの2人を監視しておくからお主らはあの勇者4人を監視しておれよ。」


 「…かしこまりました。調律神様。」

 



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 王都のから少し離れた森、中にはゴブリンやオーク、スライム等の余り強くない魔物が多いが、数が多いので王都の冒険者でも運悪く群れに遭遇し、死んでしまうことも多い。


 そんな森の中を王都から追放された翔と龍忌は歩いていた。


 「…あー、やっと外に出れたけどまさか迷うとは思わなかったぞ。翔さんや。」


 「…いやいや、迷ってねーし?迷ってないと思ったら迷ってないんだよ。」


 魔物の数が増えていくとどこかから金属音と破裂音、何かの方向が聞こえてきた。


 「…面倒臭いけど行ってみるかー、人居たら道聞けるし。」


 「迷ってないからな。…まぁ、行こうか。テンプレに遭遇することを願ってな!」


 こうして2人は音のする方へ走るとそこは開けた草原になっていた。その奥には馬車が倒れているが馬がおらず周りをオークとゴブリンが囲んでいた。中心にはオークとゴブリンをギリギリ倒している状態の長い金髪を揺らし白銀の鎧を身につけた女騎士が戦っている。


  



 女騎士の死角からゴブリンが一体馬車へ向かう。それに気付いた女騎士は慌てて馬車へ駆け寄ろうとした。その瞬間戦っていたオークが振り下ろした棍棒が背中に当たってしまう。かなりのダメージが入ったのかすぐに起き上がれずそのままオークとゴブリン達が女騎士へと群がり始めた。

 


 女騎士が必死に抵抗していると横から黒いモノが凄まじい速さで目の前を通るとオークとゴブリンが消えた。


 森からは気の抜けた声で


 「おーい、無事かー?」


 と、声をかけてきた2人の青年がいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る