3話 協力?

 「そ、そうか、まだ決まっていなかったのか…。まぁ、ゆっくり決めてくれれば良いさ。明日の今と同じ時刻に使いを出すから再びここで同じ事を聞く。それまでに決めておいてくれ。」


 「すみません、ありがとうございます。1つだけ聞いても宜しいでしょうか?」


 正義は王に何か聞きたいらしく手を挙げ発言する。


 「俺たちは、元の世界に戻れるのでしょうか?」


 召喚された時は帰れないと言われたがやはり納得はできないだろう。何か方法があればと言う望みを王に問う。


 「うむ、確かに我らには元の世界には送り返せない。だがもしかしたら魔王城にあるという禁書庫に禁魔法が書かれた本が納められていると聞いたことがある。何せ諸君らを呼んだ召喚魔法はかつての勇者が魔王の目を盗み、その禁書から写してきた物だからだ。方法があるとすれば恐らくその禁書に書かれているだろう。しかし、その禁書庫は魔王の部屋を通らなければたどり着けないらしいのだ。」


 王の言う禁書は神々が自ら作り出しあまりにも危険だったために使うことを禁じた魔法が載っている物である。神の魔力をかなりの量消費してしまい制御も難しい物ばかりなのだ。


 「…わかりました。俺たちはどの道魔王を倒さなくてはその方法にはたどり着けないのですね。」


 正義は王の言葉を聞き魔王を倒すことを決めたのか握り拳をつくる。


 すると扉をノックする音が鳴る。それを聞いた王は正義達を入れたときと同様に入れと一言言うと扉を開けメイドらしき女性が入ってきた。


 「…失礼致します。勇者様方の部屋を6部屋を確保いたしましたのでご報告に参りました。各部屋には担当のメイドをつけておりますので勇者様方はご用があればそちらにお申し付け下さい。」


 女性がそう言うとその位置から少しずれ扉の先が見えるようになる。そこには同じメイド服を着た女性が6人並んでいる。彼女たちが正義らの担当メイドになるのだろう。


 「わかった。それでは勇者諸君はメイドたちに部屋に案内して貰うと良い。その途中に食堂があるので食事がしたければメイドに頼んで部屋に持って行くかせるか食堂で料理人に頼むと良い。」


 「…それでは勇者様方、私はこの城のメイド長、セルビアと申します。これから各部屋へ案内いたしますので私についてきて下さいませ。」


 女性がそう言うと部屋を出る。そのあとに正義たちも部屋を出ると部屋の前で待っていたセルビアに案内され6人は自分に割り当てられた部屋へたどり着いた。道中には扉の上に書庫、食堂、会議室…等と書かれておりどれがどの部屋かすぐわかるようになっており、メイドがいなくてもすぐに歩いて行ける距離にあった。


 「ごめん皆、この後すぐに食堂で話し合ってみたいんだけど良いかな?勿論君たち二人も。」


 正義が部屋に入ろうとする5人を止め唐突に切り出す。すると正義と仲の良い3人は同意したが村神と日高の2人は面倒臭そうな顔をする。


 「聞くだけ聞きに行くよ。」


 「あぁ。」

 

 と、2人がやる気なさそうに返事をすると他3人がその態度にイラついたのか眉間にしわを寄せる。しかし2人はすぐに部屋に入ってしまったので他の4人も部屋に入っていった。


 

 


 

 しばらくすると食堂には召喚された勇者が4人と巻き込まれた者の2人が集まり話し合いを始めようとしていた。


 「…俺は魔王を倒しに行こうと思う。困ってる人がいたら助けるべきだと俺は思う。でも、俺一人じゃどこまで行けるか分からない…だから…俺に協力してくれないか!頼む!」


 正義の言葉に勇者3人はすぐに賛成した。


 「僕はパス。」


 「俺もいいわ。」


 やはりこの2人が賛成しなかった。そのことに対し勇者3人も納得できないのか機嫌が悪くなる。そして裕志がキレる。


 「…お前ら…巫山戯んなよ!何様のつもりだ!ここは皆で協力するべきだろうが!」


 「落ち着けって裕志!」


 2人に殴りかかりそうになる裕志を正義が止める。それでも2人は興味がないのか自身のステータスを確認している。


 「この2人は俺たちに巻き込まれてきたんだ。俺たちとは事情が違う。」


 正義が裕志にそう呟くと2人は眉をピクリと動かし立ち上がる。その瞬間、勇者4人はその場でとてつもない圧力を感じたのか身を縮める。それをみた2人はそのまま食堂を出て行ってしまった。


 

 その時食堂にいたのは勇者たちだけではなく当然一般の兵士もおりその圧力に反応し一斉に勇者を見る。上級の兵士はその圧力が勇者ではなくステータスが一般人並みでしか無かった2人に対し恐怖したという。




 そのまま勇者と巻き込まれた者の関係が改善されることは無く翌日、約束された時刻に王の執務室に案内された。

 


 


 

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