2話 あ、忘れてた

 その言葉を聞いた者は理解できるわけが無かっただろう。何のつながりも無く出て行こうと言ったのだから。


ーヒダカ、ムラカミ視点ー


 うーんと、ここはどこだ?見たとこ城の一室か?魔力の質は慣れないけど周りに15人位と俺含めて6人そのうちの1人が龍忌か?


 翔が現在の状況に困惑している時脇腹につつかれる感触があった。


 (聞こえてるか?翔?)


 頭の中によく知った声が響く。どうやら隣にいた龍忌が念話を使ってきたようだ。いつの間に習得したのだろうか。どうせ【混沌】で生み出したんだろうが。


 (聞こえてる。どこか分かるか?)


 (知らん。周りの奴も知らねー奴だしこのまま様子見するよ。)


 (了解。)


 俺と龍忌はそのまま倒れた振りを続けていると周りにいた4人も起き始めたので俺たちも起き上がる。すると姫と明らかに動揺した4人が言い争い始めた。俺たちは周りの情報を集めるために周囲を見渡す。


 どうやらここはウェルゼルと言う世界らしい。そして案の定魔王を倒せというテンプレを持ち出した。


 (俺たちのステータスも少し変わってるな。表示されてる項目も変わったみたいだ。)


 (そうだね翔の【全知ノ書庫】で、さっきの話が本当か調べられるかい?)


 (大丈夫そうだな、…魔王はいるがこの世界の理には魔物と魔人は別の神が司ってるみたいだな。)


 (ふーん、なら独断で調べた方がいいかな、観光も悪くないし。)


 そしてステータスを確認ししたいといってきたので俺たちはスキルを使い偽装する。


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 ショウ ヒダカ 男 Lv1

 HP200 MP100

スキル


称号

 巻き込まれた者

====================


====================

 リュウキ ムラカミ 男 Lv1

 HP150 MP200

スキル


称号

 巻き込まれた者

====================


 っとまぁ、ここまで一般人レベルに下げれば扱いも酷くなってそのうち追い出されるか殺されそうになるんだろうがそのときはそのときだな。さて、


 

 「「出て行っても良いですか?」」



 この言葉で周囲は固まった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「えぇと、なぜなのか聞いても宜しいでしょうか?」


 姫は困惑している。いきなり出て行っても良いですか?だ当然困るだろう。帰してくれならまだ分かるのに。


 「いえ、こんなステータスではどのみち魔王討伐などできないでしょうしかといってここでいつまでも訓練してたらいつになるか分かりません。なので俺は少しの道銀だけ頂ければ前の世界の知識を使って生きていきますよ。」


 「そ、そうですか。貴方も同じ理由でしょうか?」


 「そうですね。見て回りたいですし。」


 姫はこの2人の答えに対しても困惑する。いきなりこの世界に来てここまで普通に会話できることに怪しさを感じたのだろう。

 

 「わ、わかりましたですが今すぐと言うわけには行きません貴方達はこの世界に来たばかりで何もわからないでしょうそれにこの世界には貴方達のような黒髪で黒目の方はとても珍しいので襲われる事もあるでしょうなのである程度強くなるまでここで訓練して頂けないでしょうか?」


 これが姫のできる譲歩だろう。


 「…わかりました。それでお願いします。」


 姫の提案に翔が承諾する。その言葉を聞き姫と周りにいた騎士や魔道士も安堵する。


 「それでは自己紹介が遅れましたね。私はこの国の姫、セリア・ローシズ・セルシアと、申します。」


 改めてそう名乗った姫…セリアは薄いピンク色のフリルの着いたドレスを着ている目は碧く美しくサラサラとした金髪である。背はそこまで高いわけでも無いので155くらいだろうか。この場に召喚された者は165を超えた者が多く低くても160の楓よりも低い。


 召喚された者達が全員立ったために発覚した姫の身長だ。それまでは全員が床に座っていたので気付かなかった。


 「そ、それでは皆様、先ずは私の父上にあっていただきますので、どうぞ此方へ。」


 姫に続き立ち上がった後、勇者達の後ろにあった扉から廊下へと出る。部屋には騎士や魔道士が残り魔方陣を消すなど掃除を行っている。そこへメイドがバケツなどを持って走って行く。


 城の中はかなり豪華な造りになっており、廊下に白い石のブロックに鮮やかな紅いカーペット、照明は壁に半円の物が取り付けられておりその中で光を放っている。


 しばらく歩くと1つの部屋の前に着く。その部屋の扉は木でできており他の部屋に比べると大きい。そしてその扉には他の部屋には無い太陽のような絵が彫られていた。


 コンッコンッ


 セリアはその部屋に対しノックをする。すると中から低い威厳ある声が聞こえる。


 「入れ。」


 ただそれだけの声に勇者の4人は萎縮していた。しかし日高と村神は怯むこと無く何でも無いかのようにそこに立っている。


 セリアが扉を開ける。先ず眼に入ってきたのは机の前でいやそのさらに手前にテーブルがあるか。机とテーブルの間に仁王立ちをしたとてもがっちりとした男性が立っていた。


 「よく来たな勇者諸君。先ずは座ってくれ。」

 

 彼はそう言うと勇者達をすぐ近くの椅子やソファに座らせると再び口を開く。


 「魔王討伐に協力してくれると言うことでよいのか?」


 「「「「あ、」」」」


 このとき魔王討伐についてをすっかりと忘れていたようだ。

 

 


 

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