1話 二度目の転移

 ウェルゼルへ召喚された6人に対して部屋にいる姫と魔道士達ははかなり困惑していた。本来なら4人召喚されるはずの魔方陣から2人多く召喚されたからだ。騎士はこの事にあまり関心はなくそれどころか2人も多く召喚されたことで歓喜した。


 姫達が色々な感情に包まれている中先程まで倒れていた6人が起き上がり周囲を見渡し目を見開いている。いや、その中の2人は見開いた後すぐに姫達を観察し始めた。


 「あのここは何処ですか?」


 1人の少年…正義が周囲にいる者…騎士や魔道士達に問う。


 「ここはセルシア王国です勇者様。」

 

 問に姫が答える。その返答を聞き正義の近くにいた男女は困惑する。


 「どこよそれ、わたし達を帰してよ!」

 

 「そうだ!誘拐は犯罪だぞ!今すぐ俺たちを元の場所に戻せ!」


 男女…雪と裕志が叫ぶ。それを見て宥める楓と正義。そしてあたりを再び見始めた村神と日高。


 「…申し訳ございません!貴方達を元の場所に戻すことはわたし達にはできません!」


 姫は泣きながら叫ぶ。それを聞いた正義や裕志はそれに対しなぜかを問う。

 

 「なぜ返してくれないなのですか?この国がどこにあるのか分かりませんが車とかでここへ連れてこられたんですよね?」


 「申し訳ございません…ここは貴方達の元いた世界では無いのです。ここはウェルゼルと言う名の世界。貴方達の世界とはまた別の世界なのです。」


 姫の返答に戸惑う正義達。それもそうだろういきなり異世界だと言われて信じることができるわけ無いだろう。


 「信じられないのも無理はありませんが事実なのです。どうか…信じて下さい。」


 再び姫は泣き周囲の騎士や魔道士が心配そうに見つめている。それを見ている正義達は目の前の少女に申し訳なさを感じたのか目を背ける。


 「…それで、俺たちがこのウェルゼル?に呼ばれた訳は何ですか?」


 正義は姫に問う。姫は手で涙を拭うと口を開く。


 「貴方達、勇者には魔王を倒していただきたいのです。この世界の魔人や魔物は人を襲って来て大きな被害を出していくのです。そしてその魔人や魔物を従えているのが魔王なのです。…ですが我々では勝てませんでした。ただ、我が国の兵を無駄に死なせてしまったのです。…ですからお願いします!強大な力を持つという異世界の者ならばと!貴方達しか我々はもう頼ることができないのです!」


 姫の言葉を聞く正義達は困惑する。


 「ま、待って下さい。俺たちは今まで争いごとなんてしたことの無い者なのですよ!?いきなり魔王を倒せと言われてもできるわけが無いでしょう!」


 正義は魔王の討伐などできないと言うそれに周囲の楓や雪も同意する。


 「いえ、異世界の者達は全員が我々よりも強大な力を持つと言われています。先ずは皆様ステータスオープンと言っていただけますか?」


 姫がそう言うと6人はステータスオープンと口に出す。すると6人の前に薄い板が現れそこに文字が表示されていく。


====================

 セイギ シンドウ 男 Lv1

 HP2000 MP2000

スキル

 鑑定 聖剣術Lv1 限界突破 光魔法

 火魔法 

称号

 異界からの勇者 

====================


====================

 ユウシ ヒョウドウ 男 Lv1

 HP2000 MP800

スキル

 鑑定 限界突破 闘術Lv1 火魔法

称号

 異界からの勇者

====================


====================

 カエデ マスミ 女 Lv1

 HP1500 MP2500

スキル

 鑑定 光魔法 水魔法 火魔法 

 杖術Lv1 

称号

 異界からの聖女

====================

 

====================

 ユキ シドウ 女 Lv1

 HP1500 MP1500

スキル

 鑑定 光魔法 水魔法 刀術Lv1

称号

 異界からの勇者

====================


これが先程まで姫と言い争っていた4人のステータスであり傍観していた残り2人のステータスは


====================

 ショウ ヒダカ 男 Lv1

 HP200 MP100

スキル


称号

 巻き込まれた者

====================


====================

 リュウキ ムラカミ 男 Lv1

 HP150 MP200

スキル


称号

 巻き込まれた者

====================


 っであった。


 最初の4人を見た姫や騎士は勇者と聖女がいることに歓喜した。


 「おぉ、勇者だけで無く聖女まで!しかもLv1ですでにここまでスキルがありHP、MP共に一般人よりも数倍高いぞ!」


 しかし、そんな彼らは続けて見た2人を見て愕然とした。ステータスは一般人並みでありスキルも無かったからだ。これにはこの場にいた姫も召喚された他の4人も驚愕していた。


 「こ、こういうこともありますよね。」


 「大丈夫ですよ!訓練してたら次第に上がります!」


 と言う励ましもあれば


 「ッチ、使えねーな。」


 「クズかよ。」


 と言った罵声も聞こえてくる。そして2人は

  



 「「出て行っても良いですか?」」





 と、笑顔で言い放った。


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る