プロローグ
「姫様!あと少しで発動します!もう少し魔力を!」
「分かっています!なんとしてでも成功させなさい!」
異世界ウェルゼル…創造神ウェルゼルが造った世界にある大国、セルシア王国。
今この国の王城の一角にある塔最上階では勇者を呼ぶための魔方陣へこの国の姫と騎士、魔道士達が魔力を注いでいる。魔方陣には魔力を導くための魔導語と幾何学模様が描かれておりその幾何学模様は門の形をしていた。
姫はその地位に見合った青いドレスを着ており他の魔道士は王国の紋章の刺繍が施された黒いフード付きのローブを着て魔方陣へ手を向けている。
「後どれくらいですか!?」
「あと2分ほどで魔力は完全に溜まります!」
「分かりました!魔道士の方はいつでも詠唱できるように準備を!」
「「「「ハッ!」」」」
魔道士からは同時に返事が返ってくる。
魔方陣は始め黒かったが魔力が溜まるにつれ色が変化していく。
異世界の扉を開くには本来神にすら難しい事である。理由は莫大な魔力と座標を決定できないこと。つまり開く事は出来ても特定の世界へ繋げることができないのだ。失敗するとその世界もろとも消滅してしまう可能性もある。そのため本来ならこの魔法はすでに知られることは無くなった筈なのだ。
一帯どこから拾ってきたのだろうか。
「来ました!お願いします!」
魔方陣に魔力が溜まり白く輝き続けている。その瞬間、魔道士達は一斉に詠唱を始める。
「「「「異世界の扉よ彼の偉大なる大地と我らの大地を繋げよ。魔力よその偉大なる力で道となれ!異界門【開】!!!」」」」
魔道士が詠唱を終えると魔方陣から門が現れる。その門には白と金の天使の羽が扉に描かれており門が開くと目の前を覆う程の光りで覆われ目の前が一瞬見えなくなった。
そして、そのとき2つの世界に門が現れていた。
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日本…平和であるこの国では神隠しと呼ばれる現象がある。それはいつどこで起こるのか、そんな現象は最初から無いのか、実際のところは分からない。
「おーい、正義ー、あっちでお前の彼女が呼んでるぞーw」
「彼女じゃ無いって、ただの幼なじみだよ。何回言ったら覚えるんだ全く。」
とある学校の放課後、ほとんどの学生は部活か帰るかで教室には進藤正義と真澄楓、兵藤裕志、獅童雪という小学校から高校2年までずっと一緒にいる馴染みのメンツで集まっていた。
進藤正義はどこにでも居る活発な男子というよりは生徒会長を任されるような落ち着いた優等生というような印象を持ち、真面目な青年であった。楓に対し恋心を抱いているが楓以外は気付いているが当の本人が気付いていない。
逆に兵藤祐志は明るく活発な男子生徒であり、もちまえの行動力がある。身長は正義よりも少しだけ高く、学校では正義の次に女子からの人気が高い青年だ。
逆に学校の男子に一番人気なのが真澄楓である。男女ともに優しく色々な人物に対し気さくに話しかける事も多いため先生にも人気があるようだ。身長は一般的な女子生徒という感じで高くも低くもない。容姿も優れていてそれも合わさって人気なのかもしれない。
獅童雪の背は楓より少し高い程度であり、そんな3人の保護者のような立ち位置に居る女子生徒である。そんな立ち位置のせいか小学生の頃から周囲の女子からは嫉妬の対象となりかなり気に病んでいたが、面倒見のよさから味方が多く虐めなどはなかった。いつしかそれも当たり前のこととなり3人と共に居ることが多い。
「雪ー、ここ分かんないから、教えてー。」
「たまには自分だけで解きなさいよ。貴方のお母さんじゃ無いんだから。」
楓と雪は今日出された宿題をしているのだろう。窓辺にある机を2つ繋げその上にノートや教科書を広げている。
「ほら、彼女が困ってるぜ、教えてやんなよw」
「違うから、はぁ、…ほらどこ分かんないのさ、教えるから。」
裕志はからかうように言い正義はなんだかんだ文句を言いながらも楓に分からないところを教えている。
「なんだかんだ面倒見良いよ…な?」
裕志はふと足下を見るとそこには不思議な絵が門の形に広がっていくのを見た。
「なぁ?これなんだ?」
「なに?」
「なにかしら?」
「ん?」
全員が疑問に思っているとその絵は突如白く耀きだし四人の視界を奪った。
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「リュウ!お前おれが育ててた花消しただろ!」
「あれは不可抗力だよ、ね?ヴァニタス?」
「そうですね不可抗力です。」
「ほら、ヴァニタスも言ってるし無実だよ。」
「嘘つけ!俺のスキルが嘘だと言ってんだよ!やっと咲いたマンドラゴラを!許さねぇからな!」
ウェルゼルとはまた別の世界の1つに日本からかなりの人数が召喚された。今この場にいるのはかつて互いに争っていた者たちである。
「アレうるさいんだよ?しってるの?寝れないんだよ?ねぇヴァニタス?」
「えぇ、寝られないですアレは駆除して当然でした。なのでリュウキ君は悪くありません。」
「だまれ!ずっと叫ばせるわけ無いだろ!ポーションに使うんだよ!ラフィもなにか言ってやれ!」
「そうね、マンドラゴラはうるさいわね!というか私が聞いたら死にそうになるから!」
今彼らがいるのは村神龍忌が造った空間である。この場所は現在多くの種族が平等を心がけた平和な国になっている。そしてその中央にある城の一室で日高翔と村神龍忌、ヴァニタス、ラフィがいつもの日常を過ごしていた。
日高翔は異世界であるにもかかわらず【創造】のスキルで日本出よく着ていた衣服をきている。背も高く髪の一房が白く変色しているがだいぶ前からのことなので既に当たり前のこととなっていた。性格はおちゃらけたり真面目だったりと周囲の目から見ても活発な青年である。
村神龍忌はそんな翔とは逆に物事に集中すると周りが見えなくなるような、静かそうな青年である。背は翔より少し低い程度なので気にならないが髪で目の半分は隠れている。服装は基本黒が多く今は黒いコートを着ていてあまり見えない。
ラフィは見た目だけなら活発な少女という具合でムードメイカーのような立ち位置であるが実際は女神であり事情があり、翔を依り代にしているのであまり女神という感じではないせいぜい服装が女神っぽいだけである。
ヴァニタスは龍忌を依り代にしている女神ではあるが性質がラフィとはまた違うため性格も考え方も全く違う。今は愛用の紺色に桔梗の刺繍が入った和服を着ている。基本は龍忌のそばに居ることが多く何かと世話を焼く保護者のような女神である。
そんな翔と龍忌の足下に魔方陣が広がる
「「!」」
2人はその魔力の質がこの世界のものでは無い事を察知すると、ヴァニタスとラフィも異質な魔力が入り込んだことに気づきそれが召喚の類であると判断する。
ヴァニタスとラフィは実体化を解き依り代である龍忌と翔の体へと入り込む。
「城内の者に伝達!これから我らはこの地をしばらく留守にする!我らがいない間しっかりとこの国を統治していろ!」
龍忌がすぐに魔法で城内に伝えるとすぐに魔方陣が白く耀き出し視界を奪った。
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「姫様!無事ですか!?」
「えぇ、平気です。それより門は?」
いきなりの光りで失われていた視界が徐々に戻ってくる。騎士や魔道士たちも徐々に視界が開けてきたようだ。
そして門があった場所には6人の男女が倒れていた。それを確認した騎士や魔道士の感情は歓喜…ではなく
「「「「「「6人も?」」」」」
っという疑問であった。
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