第19話

「というわけで、次回から、本作は、『いっそ来世は犬になりたい、

 警視庁きっての犬(ドッグ)マニア、警察犬係 城田櫂(しろたかい)』

 シリーズに名前を変えます。

 みなさん、どうぞご期待ください。」


「落ち着け!」


城田の漏らした妄想に、蜂須賀がその肩をつかんで揺さぶる。


「謎が解けたっていうのは、それはきっとお前の勘違いだ。

 そのドッグドリームから、目を覚ませ!」



そんな蜂須賀に、助け舟を出すように、城田の携帯電話が鳴った。

画面に表示された名を見て、城田の目に、土佐犬を前にしたチワワのような怯えが走った。


「九宰」


3コールが過ぎた。

コールが切れると、すぐにショートメールが送られてきた。


「俺の命令に逆らうとは、やるじゃないか、城田。

 部下の風上にもおけないお前には・・・」


再びコールが鳴る。

城田は飛びつくように電話に出た。


「待ってください、九宰さん! 俺、真相がわかったんです!!」


次の瞬間、キンキンに冷えたビールを目に浴びせたような九宰の声が、

城田の耳の穴に流し込まれた。


「奇遇だな、俺も真相がわかった。

 お前が俺をナメてるってことがな」


5分間、城田は言い訳するように、激しく言い訳した。


「しつけなら、あまりのマンションでたっぷりしてやる。

 5分で来い」


「はい!!」



バンダイのマンションから警察犬のように飛び出していく城田は、

一瞬、蜂須賀を振り返った。


「来るか?」


蜂須賀は、バネの入った袋を手に頭を振った。


「俺はいい。俺にもちょっと考えている事件の真相がある。

 そいつを確かめたい」


そう言った蜂須賀は、直径7センチのエアコンの取り付けダクト孔を見た。


「そうか、じゃあ、あとでな」


そう言った城田もそのダクト孔を見て、それからあまりのマンションに向かって、一気に走り出した。

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