心を本に委ねませんか?

ボル

第1話 本は空から降ってくる

チリリリリリ

朝はこの目覚ましの音で目が覚めた。

俺は右手で目を擦りながら目覚ましを止めた。

しっかりと目が見えるようになると、時計の針は家をもうでないといけない時間を指していた。


「ん!?!?もうこんな時間?!」

二階にある寝室から勢いよく飛び出し、台所の冷蔵庫から適当にパンをつかみ出すと急いで支度をして家を出た。


「急げ急げ!!!高校生活一日目から遅刻はマジでヤバい!笑い者にはなりたくねぇぇえぇ!!!」

なんて叫びながら全速力でもうダッシュした。


だが、校門前に着いた途端にまるで俺の遅刻をあざ笑うかのように大きな音でチャイムがなった。


…………そのあとはもう大変。

始業式が終わるないなや初めて会う担任には怒られ、初対面の同じクラスのみんなにはいい笑い者にされた。

これじゃあ俺の夢の青春高校生活はないな

そんな言葉が頭をよぎった。


俺が席につくと一人の男子が声をかけてきた。

「あんた度胸あるねぇ、一日目から遅刻するなんて。えっと

花咲くんだっけ?」


「へいへいその通り、一日目から遅刻して笑い者になった花咲琉夏と申しますが何か御用ですかぁ?」

不機嫌な口調でそう返すと相手は手を叩いて大笑いしだした


「アハハハ!!ヒィヒィ、バカにしたくて声をかけたわけじゃないんだww

ただ気になってねw

あぁ、自己紹介がまだだったね。僕は村上和斗、ぜひ仲良く頼むよ」


そう言って握手の手を差し出してきた。

のでありったけの握力で握ってやった。でも和斗は少し手を痛そうにしただけでじゃあまた!

とだけ俺に声をかけてバックを持って帰ってしまった。


俺は机に肘をついて、んだよあいつ。

と呟いて時間差で教室を出ていった。


俺はブラブラしながらゆっくりと帰り道の住宅街を歩く。

「はぁ、一日目からこれだよ。遅刻に説教、ついてねぇなぁ。」

そんなことをブツブツと言いながら歩いていると


バシィィィン!!

そんな音を立てて頭に何かが当たった。

「イテェえぇ!!超痛いんだが!?なんだよ!次はなんだよ!不幸は続くもんだねぇ!!」

頭を押さえながらそう叫んだ。痛みが良くなったところで鋭い目で下を見ると一冊の本が落ちていた。

厚さ的にはハ○ーポッターの原作本と同じぐらいだろうか、俺はそれをスッと持ち上げた。


「こんなのが頭に…ひぃ。よく怪我しなかったな」

この瞬間に苛立ちが恐怖に変わったのだった。


折角なんで開けちゃおうか、なんて独り言をいいながら本を開いた。


この行動が、俺のこの先の未来にどれだけの影響を与えるか…そしてどれだけの後悔を与えるか、今は知るよしもない。


完全に本を開ききった時にそれは起きた。

本は眩い光を放ち初め、その光は俺をも包み込む。


目が眩しい!!!


だがこれからがもっと苦痛だった。

何故か右手が痛みを発し始めたのだ。


痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!


次第に眩しいは痛いに変わっていき、痛みで意識を失いかけたときにその光は止んだ。


そして落ち着いてからゆっくりと顔を上げると、そこにはスッポンポン姿の女の人が立っていた。


俺はすぐに目を反らした。


そうすると女の人は何も感じないのかその裸のまま近づいてきて

「んーと。君が契約者さんだよね?」


と聞いてきた。

「い、いや、あの、何いってるか分かんないですし、何より。その。そんなに露出していると、捕まっちゃいますよ?」


そういって俺はバックから体操着を引っ張りだして後ろを向いたままそれを渡した。

「あ、そうだよね!あはは、すぐ着るから

もしかして見ちゃった?」


「いや、まぁ。少しだけだけどあなたのお体拝見しちゃいました。はい。だから出来るだけ早くそれ着てください。お願いします。」


うん。という声が帰ってきた。少し経って威勢のいい声が俺を呼んだ。


「はぁい!もういいよ!こっち向いて契約者さん♪」


俺はクルッと右回りして、すぐにツッコンだ

「いや、マジでなんですか!?契約者?!俺が?!Why!?」

そうツッコミを入れると、女の人は腰に手を当てて話始めた。

「えぇっと。私も今色々こんがらがってて、ね。うーんとじゃあ質問!あなたが本を開いた人?」


「そうですよ。急に空から降ってきた本とゴッツンこした本を開いた結果が現状ですが?」

と、ちょっとキレ気味で話した。


「おー、やっぱり契約者さんだったんだね!私はその本だよ!!「BookNo.4 具現化の書」って言うんだ!あ、てか、ため口でいいよ?」


「お、おう。えっとつまり本を開いたせいで俺はあんたの『契約者』になっちゃったってこと?」

そう聞き返すと少し困りぎみな顔で続きを話してくれた。


「うーんと。私が実体を持ててるってことは君と契約がきっと完了しているからなんだけど。正しい契約手順を踏んでないんだよ。だから断定できないんだ」


「正しい手順??どんな感じなんだ?」

えっと、と、少し思い出すようにして具現化の書は話を始める

「1、本を開く

2、黒い光がその人を飲み込む

3、本に感情を奪われて人間は無意識状態になる

4、本はその人の感情を利用して契約のいけにえを探しにいく

5、いけにえ。すなわち人間一人を殺す。

6、契約完了

て、感じかな。」


その話を聞いたとたん、唖然とした。

それはなぜかって?まず、自分の身に起こった現象と具現化の書の言う「契約手順」が噛み合ってないところだ。

噛み合ってない点としてまず、俺を包んだ光は黒い光ではなく眩しい光だったということ。

そしてもう一個が手順に「右手が痛みを発し始める」とないことだ。


「なるほど、確かにおかしいな。でも正しい手順を踏まなきゃ行けない理由があるのか?人を犠牲にして契約すること自体おかしいような」


「あ、それな。私も人を犠牲にして自分が実体を持つのは正直言って嫌い。あと、正しい手順を踏まなきゃいけないってことは無いと思う。まぁ、実はそこらへんは私たち本も知らないんだよ。でも人を犠牲にしなくて良い方法があるならそっちの方が断然良いと思うよ」


「なるほど。まぁ、そこらへんの事は後で話すとして。結局は契約をしちゃってるわけでしょ?事故だったとしても」

そう聞き返すとニコニコしながら具現化の書は首を縦に振った。


「なるほど、じゃあ契約者の俺はあんたをどうすればいいの?」

「うーんと、別に何するわけでもないけど、まぁ、''いまのところは,,私に守られることが君の役目かな」


その言葉に俺は引っかかった。''いまのところは,,だと?てことはこれから何かをしなきゃいけないこともある。そして女の子に守られろだって?冗談じゃない。俺は男だぞ?相手が本だったとしてもこっちが守るのが妥当じゃないのか?

そんなことを考えてると具現化の書が


「何難しい顔してるの?もしかして、どこか不満?」

そう聞かれたので俺はいっそのこと本音を話してやることにした。


「あぁ、はっきり言って不満しかない。急に契約者だの守られるだの言われても困るんだよ。そしてこういうファンタジックな事は俺の専門分野じゃないんだ、いつもの日常がどっかに行っちまうようで。残念ながらこの話には乗れない。契約ができるなら解除だって出来るはずだ。俺はそっちを望むよ」


だが、少し言いすぎてしまっただろうか。彼女の目には涙が溜まっていた。

彼女はその涙を右手で擦ると

「だよね、あはは。急に言われても困るよね。。。久々に実体を持てて嬉しかったんだけどな…でも君の意見を尊重するよ。………契約解除の方法は私の右手を削ぎ落とす事だよ。本には「核」っていう部分があるんだ。そこを壊したり、砕いたり、抜き取っちゃったりすれば本は実体をなくす。それが契約解除を表すんだ。」


「んな…。わ、分かった。でも削ぎ落とす物がないんだが」

そう聞くと具現化の書は


「あ、そっか。じゃあ「具現化」を使って。具現化って言うのは私と契約した人に付与される能力なんだ。

手を伸ばして「具現化!(具現化したい物の名前)」って言えばその人がイメージした物を具現化できるの。まぁ、物以外も出来たりはするんだけどね」

俺はその話を聞いて気が変わった。


「そういう便利な能力が付くなら先に言えよ!分かった!契約解除は無しだ!」

それを聞くと具現化の書はきょとんとした顔をした。


「え?いいの?ファンタジックなのは嫌いって…」

「はぁ?こういう場合は別!!これはロマンだよ!例えファンタジックな運命になったとしてもこんだけチートじみた力があるば乗り越えれる!てことでよろしくな!」


そういって俺は握手の手を差し伸べた。彼女はニッコリとした笑顔になってこちらこそ!と言って強く手を取ってくれた。



これがファンタジックな運命の始まり

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