第十一話「僕っ娘美少女、ミゼッタとの混浴」
「おーい、起きて!遠矢君起きてよ!」
「ん…」
薄暗い暗闇の中、目を開くとそこにはミゼッタが大きく写りこんでいた。
間近くに顔があり、全てにおいての出来事があまりにも不自然だったため、最初は夢かと思いもう一度寝ようと目を瞑るも、ミゼッタの両手が頬に触れるのを感じ取り、再び目を覚ます。これは夢じゃない。
「夢じゃないよー、執行君起きて、四時間経ったよ」
ミゼッタは僕の心を見透しているんじゃないだろうか…。
何はともあれ目が覚めた時の光景があまりにも異常だ、部屋はちゃんとロックはかけられているし、ここは男子の階のはず、何でミゼッタがここにいるのか訳がわからない。
「実はスライザー隊長が忙しいみたいでね、君の事は僕が管理するように任せられたから四時間後に起こせって言われて」
「僕を管理するように言われただって?それじゃあこれからずっとこの部屋に忍び込んで起こしにくるのか?」
「まあ忍び込むっていうのは語弊があるんだけど、何だったら堂々とかな…?」
っく…何て事だろう、確かに四時間睡眠というのは約束はしていた事ではあるが、所詮は口頭の約束だとばかり思っていた。ばれないならこっそりもっと眠ろうかと思っていたのに。
それにこれじゃあ僕の身が持たない、ストレスを溜めて怒る前にこれじゃあ何かの病気にかかって先に死んでしまいそうだ。
「そういえば何でロックされている部屋に入る事ができたんだよ、鍵かかってただろ?」
「ああ、それはジン様に送ってもらったんだよ、丁度スライザー隊長の近くにいたからね」
通りでこの部屋に恥ずかしげもなく入れたと思った、ジンというのは僕を異世界(この世界)に連れて来た、たちの悪い緑の肌をした化け物である。
確か奴の能力はテレポートのようなものだったはず、最初は異世界にへと飛び、その次にこの城の場所に彼は飛んでいた、だったらこの部屋に入る事なんて容易い事この上ないだろう。
「はあ、わかったよ、僕の負けだちゃんと起きとくから出て行ってくれ」
「う、うん、何かごめんね、僕も本望じゃないんだけど…」
「はいはい、上からの命令だろ、僕も社会人だった時同じ経験を何度もしているからわかるよ」
僕の機嫌は少し悪い、少しずつ怒りが芽生え始めたんじゃないかと思ったが、ミゼッタは僕の怒った姿を目の当たりにして何故か落ち込んでいた。
僕が怒るという事は彼女にとって喜ばしい事じゃないのか。
「もし良かったらなんだけど何か僕に手伝える事とかないかな」
「な、なんだよ突然」
「遠矢君にはね、ここに来てからずっと嫌な事ばかりを無理やりさせられてないかと思って、少しでも何か僕にでもお詫びができないかな…」
なるほど…彼女は僕がここに来てから文句を垂れたりしているのを、自分達が悪いと捉えているのか、それでミゼッタ自身それを責任を感じていると。
「まあ確かに僕も最初は酷く落ち込んだよ、せっかく望んで来た理想の世界とはかけ離れた世界に飛ばされたんだから、でも今は正直それも悪くないなと思い始めてる、初めて行ったクエストだって、ミゼッタとのトレーニングだって、何の成果も出していないけど、僕にとっては意味がある物だと思ってるんだ、それに今日皆と話しながら歩いていた時も楽しかったし、トレーニングの時も辛かったけど楽しかった、とにかく僕にとって楽しかったんだ、今日一日の出来事全てが」
「遠矢君…」
「はあ、だからそんな顔するな、まあまた明日になったら話そう、僕はまじで疲れたし今から風呂はいるから、そろそろ出て行ってくれ」
僕は僕なりのやり方で泣きそうになる彼女を慰める事にした、不器用なのは自分でも分かってはいたけど、どこか少し大人になった気分だ。
それに本来ならこの女の子とも十歳もかけ離れているのだ、身体が同じといえど精神面ではまだまだ僕の方が先輩なのである。
「ありがとう、僕が君に色々教えなきゃいけない立場なのに変だよね、泣きそうになったりして」
「変じゃない、変じゃない」
気が付けば僕は両目を押さえていた彼女の背中をさすっていた。
泣きじゃくる彼女の姿はまるで子供である、別に僕そんな嫌がってないぞと加えて言いたかったが、これは彼女の問題なのでそっとしておいてやろうと思った。
「うっ…」
彼女の眼からは涙が止まり、完全に泣き止んだのを確認する。
「もう気が済んだか、ほらそろそろ帰って…」
「遠矢君の背中洗っていいかな?」
「ひょえ!?」
な、な、聞き違いか?
ミゼッタは今完全に背中を洗うとか訳のわからない事を呟いていたのだが。
いや僕は大人だ、こんな事で動揺してどうするよと心で何度も叫ぶ。
「あ、あのさ、ミゼッタ」
「ダメ…かな?」
「いやー、ダメって訳じゃないんだけど…」
「じゃあ決定!早く服脱いで!」
先程の涙はなんだったのかというまでに彼女は唐突に満面の笑みを作り始める、それに早く脱いでだと…ミゼッタは決して後ろを振り向こうとしない、悪い冗談のつもりか。
「後ろ向いててもらっていいか?」
「え、どうして?」
「どうしてって…お前達の世界じゃ男女で裸を見せ合うのが当たり前だっていうのか?」
「だって僕達まだ未成年でしょ、未成年同士は見せ合っても特に問題は無いと思うけど、そっちじゃ違うのかな?」
「ぶっ…ぶっ壊れてやがる…」
このままじゃあお前も脱げ、といったら本気で脱ぎそうな勢いだ。
途端に変な妄想をしてしまった、彼女のはエルシーと比べれば小さいが、服越しでも乳房が少し膨れているのは分かっていた。サイズは恐らくC、いやDくらいだろう。
それに僕より一回り小さい身体、こちらは百五十くらいだろうか。
うっ…想像すれば想像する程頭がおかしくなりそうである、そもそも彼女はまだ未成年なんだ、でも僕もよく思えば未成年みたいなもんじゃないじゃないか。
いやー、だからって…ミゼッタ、流石にそれはまずいって…ってあれ?
背中を洗ってもらうという話がどうやら少し飛びすぎたみたいだ。
「なあミゼッタ、気持ちはありがたいんだけど…」
「もおー!ごちゃごちゃいってると僕の能力で無理やりでも君を今すぐ風呂に入れるからね!」
だ、だからミゼッタさん…それ僕の世界では犯罪なんですよ…卑猥な意味で…。
とりあえずお湯を沸かすだけ沸かし、待っている間にミゼッタを説得するもまるで歯が立たず、とうとうお湯が沸き、ミゼッタはなぜだか目をキラキラと輝かせながらお湯を見ていた。
ミゼッタには後ろを向いててもらうという条件で裸になり、下半身にタオルを巻いて、背中を洗ってもらうことにした。
「もおー、そんな嫌がる事も無いのに遠矢君ったらかたくなに嫌がるんだから」
背中を洗ってもらう事なんて人生で一度も無かったため、凄くドキドキする。
ミゼッタがタオルにボディソープをつけ、泡立てると、それを僕の背中にペタリっとくっつけ、両手で背中の上下を泡立てたそれで擦る。
駄目だ、心臓のバクバクが止まらない。
もしかしたらミゼッタが触れている手から、背中越しに僕の心臓の音が聞こえるんじゃないかと心配したが、特に彼女は何の反応も見せていなかった。
これは気づかない振りをしているだけなのだろうか…。
「なあミゼッタ、さっき未成年同士なら裸を見せ合っても問題が無いとか言ってたけど、もしかして僕の前も洗う気か?」
「え?そのつもりだけど」
正気かこいつは…、やはりおかしい、ちょっと慣れたと思えばこの有様だ、この世界はおかしすぎる。
「あのなミゼッタ、ひょっとして僕が向こうの世界じゃとっくに二十歳は過ぎてるって忘れてないか」
「はは、別にそうだけどお父さんともよくお風呂に入ってたし大丈夫だよ」
お父さんって…僕はミゼッタにお父さんと同じと思われているのだろうか、だとしたらそれはそれでショックなのだが。
「まあ前は自分で洗うよ」
「ええ、そんなに拒む事ないのに」
「僕の世界じゃ…なんていうか…僕のソードを見せるのはそういう関係になった時だけっていうか…」
「ソード?」
駄目だ、自分でも何を言っているのかがわからない、ミゼッタも怪訝そうな顔をしているという事は僕と同じ感想なんだろう、何でこんな事になったのか。
「と、とにかくだ、絶対に僕が洗うから!もう出て行ってくれ!」
「ぶーっ!」
非難を言いたげにしている膨れっ面のミゼッタを追い出し、お湯に浸かる。
お湯の温度は四十度を上回っていたため、少し熱めで湯気が立っていたが、僕にはこれくらいの温度が丁度良かった。
それにしても、ミゼッタはどうやって自分の部屋に戻るのだろうか。
確かここまで来た時はジンという男のテレポートで来たはずだ、そうする事によって廊下にいる男達と会わずにここに来れたはず。
だがジンはここにいないため、帰りに関しては通常の出口を使って、男子達に僕の部屋に上がりこんでいた事がばれる訳だ。
まあ電話なんかを使えば、またジンが迎えにくるんだろうが。
そういえばここに来てから携帯電話なんかを全く見ない。
置いてあるとすれば、自宅にあるような電話機が派遣先の社長室に置いてあるくらいだ。
「まあどうでもいっか」
とにかく今は何も考えたく無かった、ゆっくりと今日一日は風呂でぐっすりしよう。
そう思って居眠りしそうになった時、なんだろう。
風呂場にあるドアガラスの外が少し見にくいようなガラスで扉は作られていたが、ドア越しでもシルエットだけは見えた。
そもそもの話を言えば僕とミゼッタしかこの家にはいないはずなのだが、シルエットの形はどう考えても女の子の体であり、服を脱いでは、下着のようなものも脱いでいる。
嫌な予感しかしなかった、カルチャーショックで傷ついている今、そんな事をされたら溜まったもんじゃない。
いや、勿論僕はホモじゃないし、嫌がる理由も無いのだが、なんというか別にそういう目的でここに来た訳じゃないし…。
女の子の裸なんて見たのは幼稚園にいた時、団体で旅館に行って、全員で戦闘に入った時以来である。
頼むからそのドアは開けないでくれ、と願い続けていたが、次の瞬間。
「やあ!あんまり広くない浴場だけど僕も入る事にしたから!」
「ひゃあああああああああああっ」
あれこれ考えている間にドアは開かれた、何より驚いたのはミゼッタはタオルすら巻かずに、風呂に入ってきた事である。
ていうか見てはいけないものが次々と見えてしまった、やばい、やばすぎるこぞこの世界。
「せ、せめてタオルくらい巻いて入ってくれ、入るのはわかったから…」
「え?僕もタオルつけないと駄目かな?」
「駄目に決まってんだろっ!」
「はーい、ちょっと取ってくるね」
目を咄嗟に右手で塞ぐも、平然とした表情で立っているミゼッタの姿ははっきりと見えた。
恥ずかしさなんて何もみせなかったので、まるで僕が驚いているのがおかしいような態度である。
「ふう~良いお湯だね~遠矢君」
「う、うん…」
素直に僕のいう事を聞き、タオルを巻いてくれたミゼッタだったが、今度は僕の眼前でみっちりと肌と肌が触れていた。
ミゼッタの肌は凄く綺麗な真っ白で、苺色の髪からはストロベリーキャンデーのような甘い香りが漂っていた、恐らくそういうシャンプーを使っているんだろうけど、虜になりそうな匂いに惑わされる自分の太股をつねり、我に帰る。
いかん、何で僕はこんなにも歳下の相手を性的な眼で見ているのだろうか、僕はロリコンではない。
いや、そもそもロリコンの定義をいうなら僕はロリコンじゃないはずだ、彼女と僕は実質年齢が同じ。だけどこのミゼッタという女は怜華さんやエルシーさんとは違い、あまりにも子供っぽすぎるというか、見た目も凄い童顔である。
「何ぼーっとしてるの?」
「っは、いや、別に…」
自問自答してる僕はぼーっとしていたのか、ミゼッタの問いかけに対して驚いたような声で返してしまった。
それにしてもミゼッタの柔らかい肌が本当に触れていたので、じっとしている事が出来ない、というか伸びた足は本当にこのままでいいのか、もう少し開いた方がいいだろうか、だが開いた途端にタオルで巻いた下半身の中が余計に見えやすくなりそうだ。
「ふう、そろそろ熱いしでよっか?あれ、遠矢君?遠矢君っ!」
「はぁ……」
気がつけば浴槽の中で眠りに落ちそうになっていた、ミゼッタに両肩を捕まれ、揺さぶられることによって眠りが消える。
なんだか良い温度のお湯に浸かる事ができたのに、全く疲れが取れないような気がした。
「いや~良いお湯だったね」
「そ、そうだなぁ…」
とりあえずお湯にもつかれたので、僕達は腰を下ろして喋ることにした。
眠気が最大限に達しているため、座った途端自然と体が地面に倒れそうになったが、ミゼッタは許すまいと急いでそれを制する。
「あっ!眠っちゃだめ!」
おっと、いけない。
本当に少し油断しただけで眠りに落ちそうだった、ミゼッタがいる間はせめて平常を装うとしていたのだが、どうやらそれも無理なようだ。
着替える時はミゼッタに先に出てもらい、別々に着替える事ができた。
でも僕が着替えている時には覗かれたので、別々に着替える意味はもはやなかった気がする。
ていうか僕が男で彼女が女なのに、何故こんなにも立場が逆転しているのか、普通に考えて恥ずかしがるのは女の子の方だろう…。
「それで…僕が眠らないかどうかここで見張りをしているつもりか…」
「ま、まあそういう事になっちゃうのかな~…?」
「僕に聞くような言い方で言われても」
ミゼッタは少し顔を引きつらせている、恐らく彼女も乗り気ではないないのだろう。そう思うと少し気が楽になったが、久々に体を動かしただけあって精神的にも肉体的にも限界に達している。
ましてやこんな睡眠時間なんて正直耐えられ…あれ?そもそもこれって僕の身体なのか?ふと気づいたことだった。
確か以前ミゼッタは、僕の年齢はこの世界にいる僕の年齢と同じという事を話していた。
「なあ、ミゼッタ」
「ん?」
「ひょっとするとこの体ってテンザーのじゃないのか?」
あまり気にならなかったけど、こっちの僕と年齢が同じになるって事は身体の方も同じじゃないだろうか。
この世界は分からない事だらけだ、思いつく限りの質問はぶつけておきたい。
「いや、テンザーはテンザーで能力を使わなくても天界で鍛えられてたからね、噂じゃ十日も寝ないほどにタフな身体だったって聞いた事がある程だよ彼は」
「そ、そっか、僕がこんな能力だからひょっとしたらテンザーも同じじゃないのかと思ってな」
「うーん…」
ミゼッタは腕を組むと、何かを考えたように下を向き、目を瞑っていた。
「まあ僕も詳しくは知らないんだけど聞いた話によると彼の能力はとんでもなく恐ろしいからね、ただ彼の能力は絶対的だよ…」
「絶対的?」
「そう、誰一人として彼に敵う能力者は今の所いないからね、そしてこれはあくまでも上層部の仮説なんだけど、彼は恐らくあえてここに攻めて来ないんじゃないかと踏んでいるんだよ」
「あえてだって?」
「うん、彼の能力を使えば僕達を滅ぼす事なんて造作もない事なんだよ、でもあえてそれをしていない、まるでこのギクシャクとした冷戦状態を楽しんでるかのように。彼は、テンザーは僕達が成長して対抗できるまでに力をつけるのを窺いながら楽しんでいるように思えるんだ」
「これだけ人がいるのに僕達は手も足も出せないってことか?なあ、もったいぶらずに教えてくれよ、テンザーはどんな能力を持ってるんだ?」
「彼の能力は…絶対的支配力(アブソリュート・ディレクション)、例え相手がどんな能力を持っていても相手を無造作に操れる能力なんだ、使える範囲は限られてるだろうけど僕達もまだ分からない事だらけだよ」
アブソリュート…絶対か…てっきり僕と似た能力かと思ったけど全然違う。
テンザーの能力が凄いのは分かったが、今の僕にとって同じ能力じゃないのにがっかりだ、何事も僕は無駄に期待してしまう部分がある。
「それで、そのアブソリュートなんちゃらっていうのに弱点はないのか?」
興味は無いけど一応聞いてみた。
「一応弱点はあるにはあるんだ、彼の能力には範囲がある、それだったら更に射的範囲が大きい能力者を集めて遠くから戦えばいいだけの話だ。でも昨日アクロス君が言ってたこと覚えてるかな?彼が昔守護の能力者達(ガーディアンアビリット)に所属していたって事、身体能力ならスライザー隊長が一番強いけど、それに次いで二位なのがテンザーだったからね。彼と力が張り合うって事は能力を使わなくても遠距離攻撃は全て避けられる事を意味するんだ、実際この作戦で数回は試してるからね」
「そ、そっか、そんな化け物相手なら尚更僕の出番はないんじゃないか…」
「まあそうかもしれない、でも上層部は君を呼び寄せる事をあくまでも能力じゃなく、理論的矛盾(エラー)を狙っての事だからね、君とテンザーがもし会えば何か起こるかもしれないし、起こらないかもしれない。でもそれは作戦の一部であって、他にもまだ手はある、遠矢君はあまりプレッシャーを感じないでいてね」
ミゼッタは僕に気を遣って言っているように思えたが今の僕にとっては逆効果である。
僕はここにヒーローになるために来たんだ、二十八まで底辺サラリーマンをやってきたのにも関わらずここでも足を引っ張るだけの底辺だなんてもううんざりだ。
「はぁ…」
「あれ、僕何か悪いこと言った?」
「いや別に、それより疲れすぎてこのままじゃ怒るどころか先に倒れそうだ、今何時なんだ?」
「えと…まだちょっと出るには早いかな、五時だから後二時間は時間を潰さないと、なんだったら外に出て散歩でもしてみる?」
「それはいいよ、無駄に疲れる。はぁ…なんとか頑張って起きてみるけど、もしクエスト中に倒れたら悪いんだが僕をここまで連れて帰ってくれ…」
僕の遠回しの文句に屈したのか、ミゼッタは「うーん…」と考える素振りをみせた。生憎僕の眠気は更に悪化し、今にでも倒れそうなくらいにまで疲労困憊している。
コクリ、コクリ、と眠気のあまり首が上下に移動していた、それを見たミゼッタは背後に回り、僕の両肩に手を置き、ゆっくりと地面に倒れるように引いてくる。
意識が朦朧とする中、視界に写ったのは薄く光った電球と、ミゼッタの顔だった。そして頭の下には凄く柔らかく、温かい、さっきまで僕達がつけていたボディーソープの香りが百パーセント残ったクッションのようなものに乗せられている。
「ミゼッタ…」
「一時間半だけ、執行君今日初めてだから色々と思いつめてる事が多いだろうし、でもこの事は内緒だからね、いいね?」
「ああ…ありがと…」
その姿を見る事はできなかったが頭の下を支えていたのは多分ミゼッタの太股だ。彼女と僕は会って間もないはずだが、何故かそこには安心感というものがあった。膝枕自体初めてではなく昔母親によくされていたが、彼女の温もりや柔らかさが今は亡くなった母親を思い出させたのだろう。、
そして眠りに落ちかけた時、一言言った何かが聞こえたような気がした。
それは異世界に来てからの不安を全て包みこんでくれるかのように、優しく温かい本心から発せられた彼女の一言だったと捉えていいだろう。
「お休みなさい遠矢君、僕はいつまでも君の味方だから」
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