Chapter.3 唐突で必然な別れ

幕間8

 八郎爺さんと、こんな会話をしたことがあった。


「今日、良い夢を見たよ」


「ほう。どんな夢だ、言ってみろ」


「プールサイドで女の子と手を繋いでいる夢」


「随分と色気があって良いじゃあねぇか」


「でも、その子のことはよく知らないんだ。向こうもな。その子は泳げなくて、プールに落ちないために俺の手を気付かず必死に掴んでいるだけなんだ」


「なんだそりゃ。それのどこが良い夢だってんだ?」


「理由はどうあれ、俺の手を掴んでくれたんだ。それだけで嬉しいんだよ」


「雅人よ」


「なんだ?」


「お前さんのキンタマ、ちゃんと動いてやがるか? ちょっと顔見知りに口のかてぇ医者がいるんだがよ」


「どういう意味だ」


 まぁ、今一つ要領を得ない会話ではあるが、頭の隅に置いておいてほしい。


 ここから語るのは、恋ってやつを巡る、ちょっとした問答だ。

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