第16話 絡む彼女と切り裂く彼女

「ねぇ…アンタいつまでそうしてるつもりよ?」


『……………』


川が奏でる独特の音が悠々とながれていた。

水面に反射した太陽の光がキラキラと反射して無口な男のサングラスをより目立たせた。


「シカトって…アンタ、アタシの織を結構可愛がってくれたらしいわね?…ほらこの縄はどきなさいよ…アンタを今からぶちのめすためにねぇぇ!」


そう言って縛られて隣で座らされている少女、ファリアナは動かせるところすべてを使ってジタバタと暴れ始めた。


「ねー聞こえてんの?このダサグラサン!」


『……………………』


「こ、んのぉぉ…アホ、バカ、イカレ男、え、えーと……と、とにかくバカ野郎!」


『お前、本当に立場わかってんのか?少しは静かにしてろ…』


タイエンは何気なく意識を取り戻したファリアナの口に貼ってあったテープを外したことを後悔していた。頭が痛い。


「…って言うかアンタこの河原でいつまでいるつもりなのよ?お腹空いたし…?」


『………!!!』


タイエンは驚いたようにばっとファリアナを振り返った。


「え…ちょな、なんなのよ!?」


『やりたい事、か……』


オロオロと驚くファリアナを置き去りにして、タイエンは頭の中の記憶に意識を落としていったのだった。




タイエンという男は、レゴナスターとは別の世界で生まれた。つまりは転生者だ。

世界的には今のようにスピリードや魔術が存在しない世界。

育った環境というのは決していいものではなかった。喧嘩に闇商売、組や組織の抗争。果ては麻薬の密売など騒音や銃声が鳴り止まない街。子供の成長においては悪影響でしかない街だった。

しかし驚いたことにタイエンはそんな世界に当てられながらも強い意志を持って逆に不自然なほどまっすぐと育った。

最も憧れたのは“強い男”。

理不尽な世の中でも渡り歩け、そして自分の身の上を自分で何者にも囚われずに決める力。親元も無く天涯孤独だった少年は何よりも生き抜いていく強さを、同年代の子供や汚い大人達がやっているような悪事には目もくれず、ひたすら憧れを追い求めた。

だが、子供が成長するのには環境というものは切っても切れないほど大切なものだ。

ある時、少年は裏の路地で偶然出会った一人の男に見初められて、ある道へと入ることとなる。


それこそが“暗殺家業”だった。


強いことこそ何よりも信頼できる事実。

強いことこそある種の正義。

まっすぐ…と言っても人の愛というものを知らなかったタイエンは強さを求めて二つ返事でその道を歩き始めたのだった。


その男を師としてあがめ、様々な暗殺術とも言える技を教わった。

あるマフィヤの幹部格の男。麻薬の密売人、政界を裏で操る男、男をかどわかし金を巻き上げる女詐欺師などなど…歳を重ねるごとに一人一人を消していくかのようにタイエンは暗殺者としてみるみる成長していき、同時に成果を上げ続けた。

しかしそんな彼も、強さを求めていた彼も成長して大人の考えができるようになっていた時とある疑問を拭えなくなっていた。


“なぜ自分は暗殺業こんなことをしているのだろうか?”


小さな頃は言われるままに行動してきた。

これがこの仕事が自分の追い求めていた物だと目を輝かせていた。

だが、ふと冷静になってみると自分はただむざむざと人の命を刈り取っているだけなのではないか?

中には悪人もいただろう。死んで当然の奴も。こんな世界なんだから仕方がない。

でも全員が全員そうなのか?誰しも、十人なら十人そうだったのか?

若き日のタイエンは思いきって師の男にその疑問をぶつけてみた。


『なるほど…確かにお前の言う通りかもしれんなタイエン。ワシらに何の権限があって他人の命を奪っているのか。…はは、実を言うとワシも昔は考えたものじゃ。色々悩んだ。じゃがなタイエン、今のお主と同様その当時のワシも。長く続けていれば躊躇いが消え、迷いが消え、人としての大切なものが消える。お主は気づけただけでもまだ人間らしいのかもしれん。じゃからワシはこう考えるようにしたのじゃ…』


『これは神が定めた運命なのじゃと…』


『…うん、めい?』


『左様。人の生まれやその終わりは何を隠そう、神が決める。神だけが各々の運命、物語を把握しておるのじゃ。つまりワシらはその物語に組み込まれたいわゆる演出者。人の世ではと呼ばれても神のシナリオとしては必要な人材なのじゃ。…そう決められた運命なのじゃとな。』


今でこそ、そんなことは屁理屈以外のなんでもなくて、馬鹿げた戯言だとタイエンは一蹴できる。しかしその時のタイエンはそれが一つの答えだと信じると同時にまた一つ疑問を作っていたのだ。


“ならばその理屈からするといつか自分の運命を大きく左右させる者が眼前に立ちはだかるのではないのか?”


その時、感じた妙な高ぶりをタイエンは今でも覚えていた。

自分は神が定めた他者の運命に加担している。こんな仕事を、闇の仕事をしているのだからロクな結末が用意されているわけがない。それならきっと自分を破滅させる運命を背負った者にその結末を飾られるのだろう。

暗殺の仕事に疑問を持ったもののタイエンはやめようとは思わなかった。逆に自分よりも強い、さらなる運命を背負ったものが現れるのを待つことにした。その者を見てみたかったからだった。


-最後のことなどまるで覚えてはいない。

気がつくと草の匂いがする大地に心地よい風と太陽の光を浴びながらタイエンは眠っていた。

隣にいたのは人語を話す亀。最後に覚えていることをたどっても場所と状況がどうしても重ならなかった。

その亀はここは異世界であること。

スピリードと呼ばれる特別な武器を使うこと。

魔族の王を倒すこと。

要約すると強さがものを言う世界であること。それらを淡々と告げたのだった。

常人なら困惑するところをタイエンは全く動じずにその状況を受け入れた。

なにせゼロからのリスタート。常識を超えた力の存在もあい極まり、当然自分よりも強いやつらがいることは明らか。

己の満足のいく運命を見届けたかったタイエンにとってそれこそ、これほど神に感謝の念を捧げたのは生まれて初めてのことだった。


しかしタイエンは新たな世界でも運命に苛まれることとなる。


他のみんなにはあって自分にはことが判明するのにそう時間はかからなかった。

しかしタイエンは気にしなかった。むしろおこがましいが少しのハンデだと思い、別の道を極め始めた。

それこそが仙闘技せんとうぎだ。

一部の者しか知らない、戦闘の極意が集められたスピリードや魔術にも劣らない力。

お陰でタイエンはさらに強くなり少しずつ名前が知られていくようになった。


-裏の世界で自分の名前が有名になったのはタイエンが異端者であることが判明した時だった。


新たな世界でまっとうな生き方をして、自分の運命に関わる強者を探そうとしていたタイエン。

だが、戦いの真髄とも呼べる仙闘技。

瞬間移動を可能にした異端の超絶技。

その二つを持って、自分よりも強い相手を探すことは容易ではなかった。スピリードなど無くてもタイエンよりも強いやつは中々現れなかった。いつしか、彼は元いた世界とやっていることが同じだということに気付いたのだった。





『本当に俺は何がしたいんだろうな…。』


意識を現在に戻したタイエンは自嘲気味にふっと笑った。


「…まったくね。いや、むしろアンタはそのバカな師匠よりもさらにバカよ。」


『…ッ…なんだと?…』


声が知らないうちに漏れていたのだろうか?

隣に座っていたファリアナがやれやれといった風に笑ったのにタイエンは片眉を上げて反応した。


『…ならば貴様は、これが運命では無いとそういうのか?この状況が…?』


タイエンはぐっとファリアナの胸ぐらを掴み自分の高さまで引き上げた。


「……ぐっ…確かに運命ってやつかもしれないわね、コレは。…でもアタシが言ってんのはそこじゃないわ!」


声を張り上げて力強くタイエンを見据えるファリアナ。その目力にタイエンは驚いて胸ぐらを離した。


「アタシが言いたいのはよ。まだ師匠や他人のせいにするなら理解できる。でもアンタは運命なんてていのいい言い訳を使ってみっともなくフラフラしているだけの半端者よっ!」


『なっ………』


タイエンは絶句した。

薄々、心のどこかでは自分でも分かっていたのだ。

どこか非情になれない自分。それをかき消すかのように人の命を奪う行為を運命だとして片付けていた自分。さらには自分の後始末までもを他人に押し付けようとしていた自分。

師匠の言葉が間違っていたのに気づいてもそれを隠して気づかないフリを続けていた自分。

そんなタイエンを置きざりにしてファリアナはさらに続けた。


「でももしアンタを倒す運命の相手がいるのだとしたらそれは間違いなくアイツね。」


タイエンはまたファリアナを振り返ったが黙って次の言葉を待った。


。必ずね。…別にアイツも格別誰かに優しいとか正義の味方を目指しているとかそんなんじゃないわ。

ただアイツは。男として、天秤番として…なにより………」


…!」


ザッ…


その時タイエンは河原に一筋の影が伸びていることに気づいた。即座に顔を上げ太陽の光に目を細めながら上にたっている人を確認した。

その間もファリアナは何か含みががあるような顔で話を続ける。


「どちらかと言えば巻き込まれ体質ね。

でもいざという時はどんな相手でもぶちのめす非情さも持ってるわ。着飾ったりおごったりせずどちらかと言えば一線引いている感じ。」


上に立っていた男の身なりはボロボロだった。

服には破れた跡が多数ありボロ布をまとっているかのよう。


「でも自分は決して見失わない。自分の信条に従って誰とも分からないジーサンのために落石の中、立ち止まったりするし…」


男は何を持っているわけでもない。

ただ背筋を伸ばして堂々と降りて来る。


「女子供のために逃げ出さずに未知の能力を持った敵にほぼ丸腰で突っ込んでいく。」


その男は全身というかいたるところが痛々しいほど包帯だらけ。

それでも真っ直ぐさらにこちらへと歩んで来る。


「機械に疎くて、鈍感で、デリカシーが無くて、危なっかしくて…でも自然と人が集まってきてみんながソイツを頼りにする…。」


そうして、ザッ…と音を立てて男はタイエンの少し前に立ちはだかった。

タイエンは険しい表情で男を刺すように睨み付ける。


「アンタみたいな、ペラペラのにアイツは、織は殺されたりなんかしない。…でしょ?」


そう言われた包帯の男は顔を上げてファリアナの方を見ながら少し照れた様子ではにかみながら話した。


『い、いや〜そこまで言われると些か恥ずかしいでござるよ。ファリアナ殿。』


『天……秤…番…雛方織っ!生きてやがったのかっ!!』


そう、タイエンの前に立ちはだかったのはボロボロでおまけに丸腰のサムライ、雛方織だったのだ。


「ばか…遅すぎなのよ…もう…」


ファリアナもうっすらと涙を浮かべながら織へ優しい悪態をついていた。

口ではああ言ってもやはり心配だったのだろう。

タイエンは驚いていたがすぐさま冷静さを取り戻し、状況分析を始めた。


『……やはりか。俺があの時、貴様に最後の一撃を入れた時妙な違和感があった。。だからこそ万に一つと思って待っていたが…包帯や丸腰であることから回復を可能とするスピリードソフィアが喚べないというわけだな。それほどダメージは残っているということか…』


すると織はポリポリと後頭部をかきながら、申し訳なさそうに話した。


『…まぁ拙者が上手く喚べないのはよくある

というかいつものことなんでこざるが…お主の推察は完璧でござるよ。まぁなぜか折れた腕は完治してるのでござるが…気がつくとうっすらとファリアナ殿の魔力が感じられた故、タイエン、お主を探していたのでござるよ。』


先の戦いで折れたはずの腕や手首を動かしながら話す織。

川の水だけが先程と変わらずにサラサラと流れていた。


『なるほど。それでまたこうしてこの女を助けにきたと?……クックック…実は俺も貴様に会いたかったのだ天秤番。お前の相棒が一度俺に殺されかけたにもかかわらず俺よりもお前の方が強いという。ならば改めてはっきりさせようではないか!!その勝者こそまさに運命に愛された男だ。』


タイエンはばっと両手を広げて高らかに宣言した。だが何を思ったのかまた織の方を見た。


『しかし天秤番、貴様は今度は本当に丸腰だ。それでは話にならん。それとも死にたがりか貴様は?』


ファリアナの言葉が効いているのか、タイエンは冷静だったが同時にひどく激昂していた。


『む…確かにこれでは……』


「「ちょおおおおおっと待ったぁぁぁ-ッ!」」


織が言い淀んだ時、不意にまた上から女の声が二人分聞こえてきた。その場にいた全員が上を見上げた。


『お、お主ら…何故…ついてきたのでござるかぁ??』


その正体にいち早く気づいた織は素っ頓狂な声をだしてほうけていた。


ダッ………

二人の少女は勢いよく地面をけりジャンプした。

そして織の前へとフワリと降りたつ。

青みを帯びた美しい紫色の髪。

フリルのような服でお互い対の形を成している。

身体的特徴や髪の長さなどの差はあるものの一流の人形師が作ったような美しく整った。それは-


『貴様ら…オルトロス姉妹か…』


凛と顔をあげたのはタイエンと同じく暗殺者の双子の姉妹、シールとステッカだった。


(たしか、あの娘たちって…)


ファリアナはぼんやりと敵対関係にあったことを思い出していた。


『い、一体どういう風の吹きまわしでござる?ケガの手当てをしてくれたことには感謝しているでござるが…』


織の言動から察するに少し下手だが、織の体に巻かれていた包帯はシールとステッカがやったものらしかった。

すると二人はゆっくりと織の方へと振り返り…


「べ、別にアンタのためじゃないんだからねっ…助けようとか思ってないからっ(棒読み)」


「て、ててて敵が、た、たたた戦いの風が…う…あ…お、オレを呼んでいるっ!!ぐあああ…え、っと…み、右手が疼くぜ!(アタフタ)」


『……………』

『 …………』

「……………」


冷たい風が吹き抜けていった。一人は組んだ腕をほどきまたいつもの無表情の顔にすっと戻った。もう一人は恥ずかしさのあまり茹で上がったタコよりもさらに顔を真っ赤にして俯いた。心なしか湯気がでている。


『あーーその、つまりどういうことでござる?それになにか変でござるよ?』


織が慌ててそう言うと…


「あらアナタいたのね?全然気づかなかったわ。…ここはレゴナスターですか?」


「し、織さんあなたは何もみ、見てませんよ!何にも!一切!ですよね?」


『(ビクッ…)……は、ハイ。』


謎のプレッシャーを感じ織はその場に直立した。


『貴様ら茶番はそのくらいにしろ。なんの風の吹きまわしだと聞いているのだ。確か数日前天秤番を殺しに行ったはずだ。俺の許可なくな。…どうほだされてそっち側につくことにしたんだ?』


するとシールがあの時の光景を思い出しながらタイエンの方を向き直り、口を開いた。


「別に。気になったとかそういうのじゃなくて本当にたまたま歩いていたらドンブラコ、ドンブラコと海のほうからこの人が流れてきてね…放っておくのも寝覚めが悪いから助けてあげただけよ。」


「…おねーちゃん…」


ステッカは複雑な顔で姉を見ていた。

実際はあの時、血相変えて飛び出していった織のことが気になり、二人であとをつけて廃ビルでの戦いを見守っていたのだった。すさまじい戦いの衝撃や音が止んだかと思うと、海へ落ちていく織を見て二人で引き上げ、隠れ家で匿い、見様見真似で看病していたのだった。


「でも…まぁ乗りかかった船ね。どうしてもっていうならアナタ、助けてあげるわよ?丸腰なんでしょう?」


「わ、私達がいた方が絶対良いと思います。いや、あのむしろ……」


一連の出来事を見ていたファリアナはそこでなぜか嫌な予感がしていた。


(あ…れ?なんなのこの言いようもない不安感。まるで新たな敵が現れたような増えたような……まさかっ…!!!!)


「ちょっとアンタ、タイエン!今すぐ奴を殺りなさい!」


『………は?』


『ふ、ファリアナ殿ぉぉ!?』


タイエンはわけが分からなかった。なにかの作戦かと思ったが仲間である織が一番驚いているのを見てそれはないと思った。


そうこうしている間にシールとステッカは半ば詰め寄るような形で織のところへより始めていた。


「元はと言えばアナタが言い出したことなのよ?さっきの醜態。」


『拙者が?お主らに?………???』


「は、はい。“新しい自分になるために、新しい道を見つけろ”って。だからああして…」


どうやらさっきのは二人なりの精一杯変わろうと努力した結果のようだった。


「でも中々難しいわね。変わるっていうのは。そう言えばステッカ。どこかの誰かさんが格好良く“いざという時は拙者も付き合うでござるよ”とか言ってなかったかしら?」


「ふふふ。そう言えば言ってたね。私もちゃんと覚えてるよ?」


そんな様子を遠くで見ていたファリアナは悲鳴のように声を張り上げた。


「タイエン…何してるのよ!?さっさとあのサムライを殺りなさい!早く!NOW!!」


『い、いきなりどうしたというのだ?奴はお前のマスターであり仲間ではないのか?』


「何言ってんのよ?仲間よ?血迷ったのかしら?…それは置いといて早く行きなさい!アンタ瞬間移動できるんでしょ?一発決めれば奴は立てないわぁ!行け、行くんだタイエエエエエエエエンッッッ!!!」


『血迷っているのは貴様の方だっ!』


その場で地団駄を踏んでいるファリアナをもう不気味としか取れないタイエンだった。


一方の織ははっとした様子で何かに気づいたかのように双子を見つめ頬を引きつらせた。


『まさか、お主ら……』


すると二人は少しだけ顔をお互い見合わせたかと思うと恥じらいながら織の胸に飛び込むようにしてこう囁いた。


「「だから…ちゃんと責任とってよね?」」


すると織はスルスルと重ね染したかのような濃く美しい紫色の風と光に包まれた。

その風は収まることなく、ファリアナとタイエンの方にまで吹き付けてくる。


『チッ………』


ここでようやく異変に気付いた…というより思い出したタイエンは身体能力を飛躍的に上げる仙闘技、超赤ちょうせきを使って一足で飛び上がり織へと襲いかかった。


曰く、天秤番・雛方織は使


ビュン-ジャラララッ-


『なぁ…クソが……』


突っ込んでいる途中で光の中からが飛び出してきてタイエンの動きを阻もうとした。


『舐めるな…これしき!!』


タイエンは大きく腕を振って鎖を払いのけようとしたが-


『……!これは、だと?ぐああ…』


払いのけた反動で自分に向かってくる鎖の先に付いた鎌。

超赤で上がった防御力などまるで御構い無しに鋭く切りつけてきた。

さらに新たに今度は二本の鎖鎌が上部分に下部分には三番の鎖鎌が絡みついてタイエンをがっしりと掴みそのまま地面へと叩きつける。


ドゴオオオオオン


辺りに砂ぼこりが舞う。

掴まれ叩きつけられたタイエンだったが超赤をさらに超えた力、極臙きょくえんで防御力をさらに上げてダメージを軽減させて回避した。


『やはりそう来なくてはな!…認めよう貴様が俺の運命を左右する者だっ!雛方織!』


そう言って呼ばれた織は上がった砂煙を鎌でブンッと吹き飛ばして視界をひらけた。

右手に鎌、左手にも鎌。そしてその鎌は後ろで長い鎖によって繋がっている。

サムライは右足を踏みならして高らかに告げたのだった。


『さぁ、始めようぜでござる!第二ラウンドだ!…でござる!!』


「ついさっき教えたことがまともに言えないなんて…アナタにキャラチェンは一生無理ね。」


「あはは…おねーちゃんったら…もっと気を引き締めていった方が…」


その姿、サムライにしてサムライに非ず。

消えたはずの炎が再び燃え上がる!

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