第4話

「お父さん!遊ぼうよ!」


私はお父さんにすがりついた。

お母さんには1人でおままごとでもして大人しくしてなさい。と言われたけれど1人でおままごとなんて出来っこない。


「ねぇ!お父さんってばぁ」


「うるせぇよ。ガキ!」


そして壁に投げつけられた。

痛かった。

この人は実際にはお父さんではなくお母さんの彼氏というものらしい。

だからお父さんではないのだが、この頃の私はお父さんと思っていた。


「酷いよ。」


私は泣き喚いた。


「マジで死ねよ」


口をガムテープで絞められ押し入れに入れられた。

この日から私の部屋は押し入れ変わった。

最初の頃は母がどうにかして助けようとしていたのだが、殴られてしまうのでやめたようだ。

母も殴られたことにムカついて私を殴ることがあった。

私はあなた達のサンドバッグじゃないのに。

この出来事から一年ほど立ち私は小学校に入学することになった。

けれどぼこぼこの体の私を学校には行かせられないといい、学校には行かせてくれなかった。

何度も教育委員会の人達が来たことがある。

それでも学校には行かせてくれなかった。


ある日母が今日は帰れないと連絡があった。

すると父は私に微笑んで


「楽しいことしようか」


と言った。

私は怖かったので嫌だと答えた。

もっといつもより殴られるんじゃないかと思った。

けれど父は私の服を脱がせようとしてきた。


「やめて」


父の顔は怖かった。

だから私は父の腕をすり抜けて台所に行った。

そしてナイフを掴んでこっちを見て座っている父の首に突き立てた。


「冷たい?」


そう言って私は力を込めた。

口に血が入って気持ち悪かった。

でもあの暴力をふるってた父がこんな呆気ない死に方をするなんて、私は面白かった。


「かなえ…」


誰もいないはずの家でたまに声が聞こえる。

けれど私は振り返らないようにしている。

だって振り返ったら血だらけの父だった人が立っているから。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー



「おーい。どうした?」


どうやら私はまたあの夢を見て泣いていたようだ。


「大丈夫か?」


「う…ん。」


落ち着け私。心臓も息もいつもとは違う動きをしている。

苦しいよ。


「過呼吸か…。

すってー。はいてー。すってー…」


何分たっただろう。彼がゆっくり時間を与えてくれたからなんとか落ち着くことが出来た。

今日は一人になりたくない。


「じゃあ仕事行ってくる」


「行かないで…。」


すると私の髪の毛をくしゃくしゃにして、微笑んだ。


「ごめんよ。仕事には行かないと」


大丈夫だから。

今日は寒いから温かいビーフシチューでも作ろうか。

だから大人しく待ってるんだぞ?

そう言って彼は出かけて言った。


「早く帰ってきてね…」


その言葉は寂しく部屋に響いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー



毎日放課後かなえちゃんのお母さんとカメラを持って学校に集合する。

そして先生をつけ怪しい行動をしたら写真を撮るのが私たちの日課となった。

先生は帰りにいつもスーパーに寄っている。

先生は一人暮らしのはずなのだがいつも二人分の料理を買う。


「やっぱりあの先生が誘拐しているのね」


「だと思います。いろんな先生に聞いてみたんですけど、彼女とかは居ないそうです。」


「あんたさぁ、いつまでこの刑事ごっこは続けるつもりなの?」


「そうですねぇ。もうそろそろ終わらせようかなぁ…」


1週間でもう十分なほど証拠は集めた。

けれどもっと欲しい。

先生を驚かすためにはあと1ヶ月は必要だ。

着々と準備は進めている。


「ナイフは何本買いますか?」


「そうだねぇ…5本はいるかなぁ…」


そんなにナイフあったらミンチに出来ちゃうね。

私は面白くって笑いが止まらなかった。

すると先生が振り返った。

私たちは慌てて影に隠れる。

ここは小さなスーパー。こんなに大きな声で笑ったらバレちゃうか。

私はかなえちゃんのお母さんには微笑んだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ただいま。」


どうしたんだろう。顔が暗い。

仮面かぶってても分かるぐらいに暗かった。


「どうしたの?なんかあったの?」


「誰かに付けられてる気がする」


「どういう事?」


「誰かって言ってももう分かってる。大江りかと君のお母さんにつけられてるんだ。」


私は目の前が真っ暗になりかけた。

少しふらついて壁に手をつく。

どうして私の幸せを壊しに来るの…。

アイツは何なの!

私を殴りたいがために捜してるんでしょう!

りかちゃんは何で…?


「写真も多分撮られてる」


「…」


「この関係もいつかは終わってしまう。それもすぐに…」


そうだ…。

自分のしたことはいつかかえってくる。

アイツにしたこともりかちゃんにしたことも返ってくるんだ。

じゃあ私は死んじゃうね…。

そしてこの幸せも終わってしまう。

けれど彼には死んで欲しくない。

少しの間だけでも私を救ってくれたのだがら私は彼を助けなければいけない。

これが私の生まれてきた理由なのではないのか。

そして運命なのだと思う。

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かなえ れい @tutuirika

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