第3話

ガチャ。


この音を聞くと私は安心する。


「おかえり」


「新しいワンピース。今日でここに来て1ヶ月だから。黄色と青と緑。どれが好きかわかんないから3枚買ってきた。」


「ありがとう」


「で、何色が好きなの?」


「ピンクが好きって言ったら怒る?」


「いいや、怒らないけど。次はピンク買ってくるわ。」


あぁ。もう1ヶ月か。

あっという間だったな。

もう誰も心配してないだろうな。

りかちゃんも。

クラスの人も。

先生…も。


「ねぇ。聞きたいことがある。」


「なんだよ。」


「私のこと今でも怖い?」


「そうだね。君の感情は読めないからな。」


「そっか。」


なんか切ないな。

私もたまに怖くなるよ?

私とあなたは同じなのかもしれないね。

私はそう言って彼に微笑んだ。

きっと彼もどこかの感情が抜け落ちているのだろう。

初めてあった時から思ってた。

おかしな人って。

私はすっと手を伸ばして彼の仮面に手をかけた。

そしたら首にナイフをつきたてられた。


「冷たいね。ナイフって。」


「そう。仮面は外さないで」


そんな優しい声で言ってるのに仮面の下の顔は笑っていないだろう。


「懐かしいよ。私もね、こうやってナイフを首に突き立てたことがあるの。そしてね、力を込めてブスってしたんだ。そしたら顔に返り血浴びて…。

この真っ白な仮面が赤くなっちゃうね。」


涙が溢れて、目の前が見えなくなってきた。


「殺してもいいよ?刺しなよ」


なんでこんな感情になるんだろう。

彼にこんな惨めな姿見せたくなかったのに。


「刺さないよ。やっぱり君は可笑しいね。」


「あなただって可笑しいじゃない…。たかが仮面を外そうとしただけでナイフを突き立てるなんて」


彼はナイフを置いて私を抱きしめた。

暖かくていい香りがして私は嬉しかった。

安心して涙が止まらなくなった。


「私はあなたのそういう所が好きなのかもね。

まだ知らない本性がたくさん出てきて面白い。」


「それはそれは。」


彼は笑っていた。

私はそのまま寝てしまった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー



あたしは今日も捜し歩いていた。


「かなえちゃんのお母さん!」


「あんた誰?」


「大江りか。かなえちゃんと仲良くしてたんです。いい情報教えてほしい?」


何よ。いい情報って。

でもこれでアイツが見つかるなら。

イライラとムカつきが晴れるなら。

こいつの話聞いとくのもいいかもしれない。


「教えなさいよ」


「かなえちゃん、部活が終わったあと真っ赤な車に連れ去られてた。

だから本当は誘拐なんでしょう?」


「そう見たいね。」


「何でそんなに他人事なんですか?」


「アイツのせいで人生が狂ったからよ!」


「私も狂いました。」


はぁ?何を言い出すかと思ったら意味わかんないこと言い出したし。

笑顔で話を続けた。


「私もね、狂わされたんです。彼氏に嘘つかれて。だから彼氏と別れちゃった。それだけじゃない。それ以外にももっともっとちょっとずつ私を狂わせてきた。

私の人生はアイツのせいで狂った!!」


そして1枚の紙を見せてきた。

そこには一台の車と1人の男が載っていた。


「犯人はこの人です。私あの日車のナンバーを一応メモしてて。そしたらこの人見つけちゃった。犯人は私たちの身近にいるんです。」


そしてにやりと笑った言った。


「警察には言わずにこの男とかなえちゃん見つけて殺しません?」


と。

あぁ。あたしは何度人生を狂わされたらいいんだろう。

多分こいつにも狂わされるんだろうな。

そう思った。


「犯人の名前は…中島俊英?誰?」


「かなえちゃんと私が通っている学校の先生です。」


「あんた何でそんなに。」


「たまたまです。ふと外を見たらこの車がとまってて、ナンバーがまさかの一致。

だから見張ってたら先生でね。笑っちゃいますよね。」


犯人ってすごく身近にいるんだもん。と言い、とてつもなく不気味な顔で私を見つめてきた。


「な、なによ?」


「殺すのって楽しいと思います?」


あたしの周りには昔からこういう感情がどこか抜けたような奴が多い。

あいつもそうだ。

小さい頃は可愛かったのに、私の彼氏だった人に殴られてから少しずつ感情が抜けてきた。

そしてしまいには…。

あの光景は残酷だ。

世界が真っ赤になってしまったんじゃないかとおもった。

いや、真っ赤だった。


「もっと調べあげて、追い詰めて行きましょう?」


少しずつ苦しめてやる。

あたしはそう決意した。

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