13 祭りの夜の女騎士がかわいすぎる件 2
すべての準備を終えた夜。
僕は一人、カレンさんとの待ち合わせ場所にいました。
今日の段階で城の飾りつけは全て終わっており、この時間、ほぼすべての魔石燈が色とりどりの光を放っていました。周りには、その様子を見物しようと多くの人だかりが。
「ハル」
十分ほどでしょうか、待ちぼうけしていると、カレンさんがやってきました。できるだけ人込みに紛れて動けるよう、私服という約束だったのですが。
「カレンさん、あの」
「……なんだよ」
待ち合わせにやってきたカレンさんは、妙に張り切った服装でした。
普段は滅多にはかないスカートと、化粧、そして髪もきっちりとセットされているようでした。
なるほど、遅刻したのはこれが理由ということか。
「なんかこう、張り切ってますね?」
「い、いやっ、私は別にいいって言ったんだが、その、
同棲はしている僕とカレンさんですが、カレンさんは相変わらず隊長で、僕は副隊長。時間が微妙に合わないので、二人私服で出歩く機会はとても貴重です。
女性らしくめかしこんでいるカレンさん、とてもいい。
「カレンさん」
「っ、だから、」
カレンさんがこちらを向いたところで、僕は背伸びをしてカレンさんの頬に口づけをしました。
まるで僕が女の子になったみたいですが、気にはしていません。
「ちょっ、ハル、まわりっ、人っ」
「カレンさん、とってもかわいいです」
「~~~~!」
恋人同士になったからと言って、僕は手を緩めるつもりはありません。
こうして、カレンさんを真っ赤にさせるのが、僕の日課なのですから。
「――むんっ!」
「痛いっ! なんで!?」
いつものように照れ隠しの鉄拳をもらってしまうのも、また変わらず。
〇
待ち合わせ時のイチャイチャはほどほどにしておいて、僕はカレンさんは城の外周をゆっくりと歩き始めました。
手のほうはもちろんきっちり恋人つなぎ。途中見回りの騎士団の方々の生温かい視線を浴びますし、そのたびにカレンさんが手を振り払おうをするのですが、残念、今限定で僕の手は蛇です。食いついた
あきらめて二人手をぶらぶらとさせ、徐々に人気のないところへ。
「……ここなら何してもバレなさそうですね?」
「ああ、街の皆も城の騎士の注目もそれるからな、何かするなら絶好のチャンスだ。……行こう」
そういうつもりじゃないのに、という言葉をかみ殺して、僕はカレンさんの後を追って城の外壁を上り始めました。
昼と違って命綱はありませんが、今は僕もカレンさんも『仕事モード』なので問題ありません。
気配を悟られないよう、僕の魔法で音は消しています。姿は、外壁に設置された魔石燈の配置が絶妙な塩梅で何もしなくてもカモフラージュできています。
「……ハル、あそこ」
「ええ、やっぱり念のため見ておいて正解だったですね」
もっとも魔石燈が多く設置されている城のてっぺん――そう、ちょうど昼にエナが足取られた付近に、光に紛れて、ぽつんと黒い人影が浮かび上がっていました。
と、人影から、ほんの一瞬きらりと閃くものが見えました。もちろん、当たる僕ではありませんが。
「っと! 毒……はないかな。ただの小さな針、縫い針かな」
ただ、そのまま喰らったら額を貫かれていたかもしれません。
まったく、物騒なことをするヤツです。
「いきなりそっちから攻撃とは、随分とご挨拶なんじゃない?」
「――ちっ、やっぱり予想通りの生意気なガキだぜ」
顔はよくわかりませんが、そういう相手も体格は僕とそう大差ありません。
それ以外は似ても似つきませんが。育ちの問題でしょうか。
「様子がおかしいと思って念のため確認してみたら……ここに仕掛けておいた炸裂剤、掃除したのはお前か?」
「もちろん。明日からの祭りに、城で大きな花火を打ち上げる予定なんてないからね」
そう言って僕が取り出したのは、魔石燈の取り付け作業の時に、あらかじめすべて回収していた透明な粘度のある液体。
毒性もなく、また火をつけてもなんの反応も見せなかった『それ』ですが。
「へえ、それ、俺たちが作ったオリジナルなはずなんだけどな。まだどの市場にだって出回ってない……よく分かったじゃねえか」
「まあね。ウチの騎士団には今、色んな人がいるから」
液体を詰めていた小瓶を空高く放り投げると、それまで水晶のように透き通っていた液体が、魔石燈の光を受けて徐々に赤熱し、色とりどりの炎をまき散らしながら膨張、爆発しました。
僕の話を聞き、すぐに特性を発見してくれたライトナさん、アンリさん、そしてマドレーヌさんに感謝です。
「まさか、私たち王都にここまでド派手な喧嘩を売るヤツがいるとはな……貴様、何者だ?」
「本当はもうちょっと後にするつもりだったんだけどな……まあ、いいや。んじゃ、アンタにだけは特別に名乗ってやるよ、カレン」
「? なぜ、私の名を――」
「へへっ、それはな、」
周囲の魔石燈を破壊して、その手に赤い炎を宿したその顔は。
「なっ……ハル、がもう一人――!?」
「……やっぱり」
顔つきや髪型、色などは異なりますが、それ以外はまるっきり、『
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