11 この年齢になって今更面接を受ける女騎士がかわいすぎる件 2
新しく幹部入りしたカレンさんのことを色々と知りたいと言っていましたが、
てなわけで、一応、注意です。
「――いく、どうぞ、
チココやナツとともにひとまず別室で待たされていると、メイド服に身を包んだキャノッピがひょっこりと顔を出しました。どうやら案内をしてくれるようです。
「私はナッちゃんと一緒にここで待っていますから、ミッちゃんさんとの話が終わったら戻ってきてください。積もる話は、その時にでも」
「おに――ねえちゃん、頑張ってね」
二人と別れ、僕とカレンさんは別室から、再び入口の中央ホールへと移動していきました。
ミライさんの
「なあ、ハ、ハレイよ」
キャノッピが数歩先を先導する中、
一応、二人は同性の恋人どうしということなので、手はしっかりと握っています。
あ、もちろん恋人繋ぎです。カレンさんは『そんな人前で……』と、何やら恥ずかしそうにしていましたが、結局は僕の押しに負け、しっかりと指と指を絡ませていました。
かわいい。
「かわいい」
「? 何を言ってるんだ」
「あ、すいません。つい心の声が。で、なんですかお姉さま? ここでは人目がありますから、エッチなのはいけないと思いますよ!」
「す、するかバカッ! 私が言いたいのはそういうのじゃなくて、だ」
キャノッピに気取られることのないよう、ごく小さな声量で、カレンさんは僕へと喋りかけます。唇をなるべく動かさず、喉の奥で声を絞るように。
僕も同じように対応します。
(ハル、質問にはどう答える?)
どう答える、ということはつまり『どこまで本当のことを言うつもりか』ということです。
王都出発前、姫様からは『もし必要なら自分が知っていることについては何でも話してくれて構わない』と許しは頂いていました。
僕達は、一応、王都の近衛騎士団に所属する女騎士ということで通すつもりです。ですから、聞かれたことについて、自身が知っていると思われる範囲のことまでは真実を答える必要があります。
(僕は、設定上『カレラさんと恋仲にある新人の女騎士』ですから、適当にとぼけたいと思いますけど、カレンさんは正直に全部答えてください。もし答えに困ったら、少しだけ強く手を握ってください。適当にフォローを入れます)
カレンさんは嘘がそんなに上手い人ではないので、ある程度王都の情報を漏らす役に回ってもらうことにします。
といっても、僕達が知っているのはあくまで騎士団の内部だけで、本当に王都にとって知られたらまずい情報は秘匿されているはずです。
(まあ、楽に行きましょう。まだ何を訊かれるかはわからないわけですから)
別にこの面接をしたからといって『お祈り』を喰らうわけでもないですし、十三星の地位をはく奪されるわけではないでしょう。
ですから、気楽にお話すればいいのです。
カレンさんはものすごく緊張しているようですが。
「連れてきた、二人、マスター。降ろす、階段」
口裏合わせをしている内に、再びただっ広いだけの何もない場所へ。チココによれば、とにかく外観だけデカくしたいという初代の考えでこのお城は作られたらしく、この大きさに合うような内装などは、まったく考えていなかったそうです。
十三星それぞれの個室など、プライベートな領域はそれぞれの自由に活用しているそうですが。
「了解、今から階段を降ろすから、ちょっと離れておいてくれないかしら」
天井のほうからミライさんの声がしたと思った瞬間、突如、城全体が小刻みに揺れ始めました。
ゴゴゴゴ、という唸りがホール全体を反響する中、
「――来た、階段」
キャノッピがそう呟きました。
すると、何もないと思われたはずの天井から、螺旋階段が落下してきたのでした。
「え、えぇ……」
機巧のような動きで勢いよく僕ら二人の前に現れた階段に、さすがの僕も呆気にとられるしかありませんでした。
以前ライトナさんが使っていた銃などといった武器からもわかる通り、帝国は魔法に頼らない技術を数多く取り入れていることは知っていましたが、まさか自室へ行くのにこんな大掛かりな機構を使うなんて。
帝国って、なんというか、自由です。
「来い、マスター、二人、いっしょ、言っている。待つ、ここで、私」
どうやら上がっていいようです。ただ天井からぶら下がっている階段を上るなんて初めてのことで心配ですが、まあ、強度自体は問題のないのでしょう。
「よし……行くぞ、ハレイ」
「はい、カレラお姉さま」
僕は、カレンさんが先に一歩踏み出すを待ってから歩き出しました。設定上でも、僕とカレンさんは上司と部下で恋人同士です。ということで、ここでのエスコートはカレンさんにやってもらわなければいけません。
ぐらりと揺れる階段に足をとられつつ、ミライさんの
上にむかって扉を開くなんて、まるで物置と繋がっている屋根裏部屋のようですが、もしかしたら、そういうのを想定してこの部屋を作ったのかもしれません。
結局、ミライさんも、思考自体は初代の人と似たり寄ったりなのかも。
と、扉を開けようとしたところで、彼女が貼り付けたと思しき『注意事項』と書かれた紙がありました。
『注意事項』
一、 入室する際は必ずノックを二回すること。
二、 どうぞ、と返事があってから、ドアを開ける。
三、 入る際は必ず『失礼いたします』と言ってから入ること。
「…………」
他にも色々書いてありましたが、とりあえずは以下略ということで。
「なあ、ハレイ。なんかこれって……」
「大丈夫ですお姉さま。言わなくてもわかりますから」
面接、といった時点でなんとなく嫌な予感がしていましたが、まさかここまであからさまとは思いませんでした。
絶対に突っ込んだりなんかしません。ミライさんのことですから、きっとこうして油断させたところで、鋭い質問やら誘導尋問やらを繰り出してくるはずです。
ということで、張り紙のとおり、二回、扉をノックしました。
「どうぞ」
「「失礼します……」」
言って、僕とカレンさんはドアを開け、ミライさんが待ち構える自室へと入りました。
まず目に映ったのは、なんの変哲もない長机に一人腰かけているミライさんと、そして、それに向かい合うように置かれていた二つの椅子でした。
「では、お二人とも元の所属と名前を改めて教えてください。では、そこの大きいほうの貴女から」
「は、はい――元王都近衛騎士団所属のカレラです。階級は分隊長でした」
「はい、それでは小さいほうの貴女」
「――元王都近衛騎士団所属のハレイです。階級はありません」
「新人、ということね。まあ、いいでしょう。ではお二人とも、そこ座ってください」
ミライさんに促されるまま、カレンさんと僕は同時に椅子に腰かけました。
ここまではまさしく『アレ』です。まあ、突っ込まないんですけど。
しかし、僕のそんな無駄な意地も、ミライさんの次の一言によって崩壊したのでした。
「はい、それじゃあお二人とも、月並みな質問で申し訳ないんだけど、まずはウチを選んだ志望動機を聞かせてくれませんか?」
「就職試験だコレ!??」
僕はたまらず声を張り上げて突っ込んでしまいました。
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